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館長からのメッセージ

企業の社会的責任(CSR)について
2011年6月

 最近、企業の社会的責任を学ぶために、当資料館に来館される方が増えています。

 松下幸之助は、企業は社会の公器であり、まず本業を通して社会生活の向上と人々の幸せに貢献することが第一義であると言っていました。

 企業は社会の公器というと何か難しく思われますが、どんなささやかな商売にも公器としての使命と役割があると考えられます。

松下幸之助は、このことを「峠の茶屋」という話でわかりやすく説明しています。

◆峠の茶屋の話 ― 社会との無言の契約 ―◆ 
【いつか何かの本に、次のような話が載っていた。
 人里を離れたある峠に、一軒の古ぼけた茶屋があって、ここに一人のおばあさんが住んでいた。このおばあさんは、朝はいつも早くから起きて、毎日キチンと店をあけ、お茶をわかして準備を整え、山越えしてくる旅人を待っていた。旅人の来る日もあったし、来ない日もあった。それでもおばあさんは、毎日キチンとお茶をわかし、キチンと店をあけていた。そのうちに、山越えをする旅人たちは、知らず知らずのうちにこの茶店で休むのが一つの習慣となり、ここで一ぷくするのを小さな楽しみと感じるようになった。
おばあさんもまた、この旅人たちの求めに応えるかのように、少々身体が悪くても、店をあけ、お茶をわかすことを休まなかった。だから、旅人たちは誰もがこの茶店をアテにし、そしてそのアテがいつもはずされないことに安心と喜びをおぼえ、おばあさんは、みんなからとても感謝されたというのである。 

 なんでもない話なのだが、私は深い感銘を受けた。このおばあさんの姿には、たんにお茶を売ってお代を頂くという以上の、誠実な奉仕の気持ちがあふれているようである。いいかえれば、峠を上り下りする旅人たちとの間に、いわば眼に見えない無言の契約がとりかわされていて、その契約を果たすために、毎日、誠実に奉仕しているという感じがするのである。

 お茶を売って金を儲けるということだけから見れば、この茶店はおばあさんのたんなる暮らしの手段にすぎず、だから旅人たちと別になんの約束もしていないのだから、自分の都合が悪ければ、いつ休んでもいいようなものである。
 だが、このおばあさんには、そんな味気ない考えは、すこしもなかったと思われる。自分の茶店は、自分一人のものではない。この茶店をアテにして上り下りする多くの山越えの旅人たちのためにあるのである。そのことを思えば、いつでもすぐにお茶が出せるように、朝早くから店もあけ、お茶の準備もしておかなければならない。そうすれば、旅人もきっと安心し、喜ぶだろう―そこになんだか、儲けということを超えた、イソイソとした姿が浮かび上がってくるのである。商売の尊さと喜びは、こんなところにあるのではなかろうか

 私たちの仕事についても、このおばあさんの姿から学ぶところが、きわめて多いと思うのである。】

企業の社会的責任、自らの仕事の意義、使命について考える上のご参考にして頂ければ幸いです。

皆様のご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 川越森雄

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