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館長からのメッセージ

お客様に手を合わす
2012年5月

以前、東京によく出張した時がありました。気に入ったカレー屋さんが見つかり、カツカレーを食べに何度か行くようになりました。そのお店は、老夫婦がされているカウンター中心のこじんまりとしたところでしたが、お客さんがいつも多く、結構繁盛しているように見えました。カレーにコクがあり、カツがカラッと揚げてあり大変美味しいカツカレーでした。また、ご夫婦の笑顔で接客される姿勢、そして親しみのある声で「ありがとうございました」と礼をしてくれる温かな接客にも大変好感を抱いておりました。

ところが、2か月ほど経って久しぶりにその店へ行ったら、閉店しており、貼紙がしてありました。「高齢のため、店を閉めることになりました。今日まで育てていただいたお客様には大変ご不便をおかけいたしますが、健康のこともあり勝手をさせていただきます。長い間のご愛顧に心より感謝申し上げます。」

このような内容だったと記憶しております。今でも、そのお店のカツカレーが食べたいと思うことがよくあるだけに、大変残念に思っています。

松下幸之助は、お客様から喜ばれているかどうかを検討することの大切さを次のように紹介しています。

 「たとえば、もしかりに自分が店をたたんでしまった場合、お得意さんが“惜しい店がやめたな”と残念がってくださるかどうか、それだけの商売を自分が今しているかどうかといったことを反省、検討してみてはどうでしょう。そのような検討を絶えずくり返しつつ商売を営んでいくならば、そこから、“自分のやり方にはまだまだ配慮が足りなかった。お得意先に対してはこういうこともしておかなければならなかった”ということが随所に次々と出てくるのではないでしょうか。」  (「商売心得帖」PHP研究所刊より)

商売というものは、単純に考えれば、品物を売って代金をいただくということだけなのですが、実際にやってみると、商売はそう簡単なものではないということがわかります。数多くある店の中からわざわざ当店を選んでいただくことの難しさに直面することでしょう。繁盛店にするために、どうすればお客様に当店を選んでいただけるか、そして満足していただけるか、さらにはまた来店したいと思っていただけるか等、真剣にお客様のことを考え、商売の工夫をしていかなければなりません。それだけに、来ていただいたお客様に心からの感謝をするのは当然のことと言えるのではないでしょうか

松下幸之助は、「心からの感謝の気持ちがあると、自然と手を合わせて拝むほどの心境になり、お客様を大事にするようになる」と本で述べています。

東京の老夫婦が営んでおられたカレー屋さんの閉店は本当に残念でしたが、「今日まで育てていただいたお客様」という言葉の中に、長年の店づくりのご苦労を感じとることができます。美味しいカツカレーを提供していただいたご夫妻は、今、お元気にしていらっしゃるのでしょうか?

展示室「経営道・商人道」コーナー展示室「経営道・商人道」コーナー(写真左)
松下幸之助の商人道をご紹介しています

皆様のご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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