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館長からのメッセージ

声をかけるサービス
2012年11月

先日、ホスピタリティ経営のコンサルティングをされておられる柿原まゆみさんの「顧客から選ばれる会社へ」(カナリア書房刊)という本を読みました。柿原さんの指導先の一つに病院があり、そこではホテルのようにコンシェルジュがおり、患者さんや来院された方へのさまざまなサービスを提供されているそうです。この本の中に、入院中のご主人の看病で毎日のように来られる奥さまに、コンシェルジュが「お体をお大事になさってくださいね」などの声がけを続けていた話が載っていました。

「声をかけるようになってから2カ月ほど過ぎたころでしょうか。奥さまの方から初めてコンシェルジュに声をかけてきてくださいました。そればかりか手を強く握りしめ、こう言ってくださったのです。
『あなただけがいつも私のことを心配してくれるので、とてもうれしいです。どうもありがとうございます』
気がつけば、お互い目にうっすら涙を浮かべていました。
『入院している主人のことはみんなが心配しても、自分のことはだれも気にかけてはくれません』
日々の看病の疲れと同時にそんな孤独感を感じていた奥さまは、コンシェルジュのかける言葉に癒され、励まされていたのでしょう。」

このコンシェルジュは、これをきっかけに笑顔だけではなく、患者さまやそのご家族に、さらに積極的に勇気づけできるような声がけをしようと決意したそうです。この病院では、コンシェルジュ以外の職員全員がホスピタリティ経営の大切さを理解し、声をかけるなどの心のサービスを提供することに努めてきました。そのことが少しずつ口コミとして広がったのでしょうか、来院される方が着実に増えているそうです。
松下幸之助も、売ること以上にサービスに心を配っている企業や商店は発展する、 特に“声をかける”ことは大切であると考えていました。

「だんだん暑くなってきて、扇風機がそろそろいるようになる。そんなとき、ちょっと立ち寄って、『去年の扇風機の調子はどうですか』と声をかける。また『お納めした品物の具合はどうでしょう』と聞いてみる。まあいわば“声のサービス”です。これはまったくの奉仕です。それによって、すぐにどうこうというものではないでしょうが、ご需要家にしてみたらどんなにうれしく、また頼りに思われることでしょう。こういうところに、商売をする者の真の喜びを感じ、また尊さというものを自覚しなければならないと思うのです。」「商売心得帖」(PHP研究所刊)

こうした声をかけるサービスを心がけている企業や商店は、商品説明や商品に対する手入れも行き届くので、お客さまの苦情も少なくなり喜ばれるのだということです。
柿原さんは、お客さまの好みやニーズが多様化し、取り扱う商品に大差がなくなりつつあるビジネス環境では、“人による感動サービスの提供”こそが選ばれる重要な要素であると述べておられます。その“人による感動サービス”を実践するための基本の一つが、相手を思いやる“声をかけるサービス”ではないかと思います。

「顧客から選ばれる会社へ」「商売心得帖」「顧客から選ばれる会社へ」「商売心得帖」
2冊とも松下資料館経営図書館にあります

皆様のご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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