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館長からのメッセージ

本読みで終わってはいけない
2013年7月

いい内容の本を読んだり講演を聞いたりした直後、すごく気持ちが高揚したり得した気分になったりしたことはありませんか。私などは、その内容と同じようにやればできると思い込んだり、明日から頑張れるなどといった意欲が湧くこともよくあります。ところが、一日二日と経つうちにそういった気持が薄らいでいき、しまいには知識として得たことも完全に忘れてしまうことも少なからずありました。
昭和52年、松下電器の幹部を対象に行われていたPHPの経営ゼミナール(松下幸之助の経営理念と実践事例を学ぶ研修)に松下幸之助がひょっこり顔を出して、受講者に次のように語りました。

「この研修で示されるのは、ぼくはこのときこういうようにやったという一つの考え方、精神やな。けど、今は時代も変わっているから、そのまま通用するかどうかわからん。だから、その精神を今の時代なり、現在の商売の状況に合わせて、自分で考えないかんな。そやないと“本読み”になってしまう。それでは具合が悪い。セミナーを受けて、“なるほど感ずるところがある”と思ったならば、その感ずるところに自分の個性なり持ち味というものを生かしていく。その生かし方がまずいと、力があってもあかんわけや。だから自分というものの特色を、自分でつかまないかんな。」
「エピソードで読む松下幸之助」(PHP研究所刊)より

単なる知識で終わらせてはいけない、自分ならどうするか、自分ならどう考えるかといった思考を通して、自分のものとして高める努力が大事であるということでしょうか。 松下幸之助は、知識と知恵は別物であると考えていました。知識とは知っているということから“道具”であると位置づけ、知恵とは何が正しいかを知ることから“道具を使う人そのもの”であると著書で述べています。

PHP研究所研究部のかつての責任者がこのようなエピソードを残しています。 「指導者の条件」という本の感想を松下幸之助から聞かれ、この責任者は、「指導者の条件はいろいろあって厳しいものだなあと。これに全部合格しないと指導者ではないとすると、正直言って私は指導者の器ではないと・・・」と答えたそうです。松下幸之助はその答え方が気に入りませんでした.

「どうして君は、“この項目は今30点しかないけど、これを50点にするにはどうしたらいいか”というように、前向きに受け取らんのや。リーダーが初めから、自分はもうあかんという気持ちでいたら、その組織はどうなる。もしほんとうに自分はその任にふさわしくないと思うんやったら、さっさとその座を降りないかんのとちがうか。」
「松下幸之助 元気と勇気がわいてくる話」(PHP研究所刊)より

リーダーならリーダーとしての本の読み方をしなければならないと諭したということです。
本を読んだり講演会やセミナーに参加することはいいことですが、そこから得たことを、さらに自分のものとして高める努力をし実践することによって、自らの“道をひらく”ことができる。私は、この二つのエピソードから、前向きに、自分なりにとことん追求した実践的な物の見方・考え方をすることがいかに大切であるかを実感しました。

「エピソードで読む松下幸之助」「松下幸之助 元気と勇気がわいてくる話」「エピソードで読む松下幸之助」 「松下幸之助 元気と勇気がわいてくる話」
2冊とも松下資料館経営図書館にあります

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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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