松下資料館 トップページ>館長からのメッセージ

館長からのメッセージ

我ながら本当によく働いた
2015年1月

みなさん、明けましておめでとうございます。旧年中は、大変お世話になりました。本年もご支援・ご教導をよろしくお願いいたします。

 松下幸之助は若い頃、大阪電燈という会社で配線工の仕事をしています。夏のある蒸し暑い時に、二百年も前に建てられたお寺の天井裏で、電灯の配線工事をすることになりました。動くたびに二百年分たまった三センチほどのほこりが舞い上がる中を、うだるような熱気によって大粒の汗が次々と噴き出るのを我慢しながら、息苦しい状況下で作業を行ったそうです。それでも、配線工事に興味があった幸之助は、ほこりも、汗も、息苦しさも忘れて、仕事に没頭することができました。作業が終わって天井裏から出ると、地獄から天国へ上がったようなさわやかさを感じたと、松下幸之助は述懐しています。

「暑さ寒さばかりではない。なにか困難な、苦しいようなことがあっても、ひとは仕事に集中すればそれを忘れることができる。そして、それを終えたあとには、ひじょうなうれしさがくる。そういうことを、あの配線工事をとおして、まざまざと教えられたのです。
 このばあい、天井裏はほこりっぽくて暑いからいやだ、やりたくないということばかり考えていたらどうなったか。かえって仕事ははかどらなくて、いらいらするかもしれません。あとで、また直さなければならないような、ごまかし工事になるかもしれません。
 苦しくても、自分のやるべきことに没頭する。やるべきことをちゃんとやる。そうすれば暑さ寒さも、またつらいことも、しばらくは、すべて忘れることができ、ことは能率的に運ぶ。つまりは、心身ともに得をすることになるのです。程度問題でもありましょうが、これは生きていく姿勢として、ひじょうにだいじなことだとわたしは思っています。」 「松下幸之助 若さに贈る」(PHP研究所刊)より

 瓦職人の方のお話を聞いたことがあります。夏は、強い陽ざしをまともに浴び、さらにはその照りかえしを受ける中で、熱くなった瓦を屋根に取り付けるという作業をしなければならない。それは、長時間できないほどの難作業だそうです。冬は酷寒の中での作業。このように、どのような職業に就いても楽な仕事はあまりないのです。
 つらい仕事をする時、私たちはつい逃げ腰になったり、不平・不満を言いがちです。しかし、そういうことを繰り返しているだけでは、充実した生き方をすることは難しいのではないでしょうか。やはり、困難を乗り越える中から、一皮むけた筋金入りの人間に成長することができるのではないかと思うのです。
 一生懸命に仕事に取り組んだ後の爽快感は格別のものです。「今日一日、我ながら本当によく働いたな」と心の底から思える毎日を送ることができれば、働く喜びや生きがいといったものがより豊かに湧いてくるに違いありません。そういった日々の積み重ねが、自分を鍛え、成長させることになります。
 新しい年を迎えて、「今日一日、我ながら本当によく働いたな」と自分をほめることができる日を一日でも多くつくっていきたいものです。

「若さに贈る」「若さに贈る」
松下資料館経営図書館にあります

皆様のご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

過去の記事はこちら最新の記事はこちら