松下資料館 トップページ>館長からのメッセージ

館長からのメッセージ

観光立国とおもてなし
2017年12月

 以前、私が台湾の台北市の地下鉄に乗った時、若者が自分の座っていた席を積極的に私に譲ってくれました。何度もこの体験をしたので、台湾はいい国というイメージが大いにアップしました。日本ではここ数年、一度もそのような体験をしたことがありません。逆に、老若男女問わずわれ先にと席を取りあう光景をよく見かけます。また、ぶつかってきても日本では「すみません」の一言もないことが多いのに、海外に行くと「Sorry」といったような言葉がよく返されます。私個人の感想ではありますが、現代の日本(特に都市部)には、他人への心遣いが大変少なくなってきているのではないか、心の荒廃が始まっているのではないかと、そのように思えてなりません。

 2020年に第32回夏季オリンピック・パラリンピックが開催されます。滝川クリステルさんが国際オリンピック委員会のIOC総会で東京オリンピック招致のアンバサダーとして「お・も・て・な・し」を紹介したことにより、世界に日本の「おもてなし」の言葉が知られるようになりました。
 東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本は、「観光立国」を提唱して海外から毎年3000万人(現在は約2000万人)の観光客に来ていただく目標を掲げています。そのためには、観光地への交通手段や施設、案内表示等の充実、そして日本の重要な観光資源の一つである「おもてなし」の徹底といったものが総合的にプロデュースされなければなりません。

 さて、世界一の観光大国であるフランスではどうでしょうか。なんと年間8500万人の観光客が訪れているそうです。聞くところによると、「おもてなし」「ホスピタリティ」の分野では世界の観光地の中では最低クラスということです。それでも毎年たくさんの人がフランスに次々と訪れているわけです。群を抜いたすばらしい観光資源があるだけでなく、利便性の工夫や交通の整備などに力を入れているということを聞きます。
 それに対して日本は、「おもてなし」を大きな観光の目玉の一つにしています。特に、接客業ではその実践に大変努力をしていると聞きます。しかし、いくら接客業で「おもてなし」に努力していても、私たち一人ひとりの普段の生活の中や公共の場で心配り・気配りの実践が薄れているようでは、外国人の目には日本の「おもてなし」文化は売らんがための形だけのものかと裏切られた気持ちをもって帰国することになりかねないでしょう。本来、伝統として気配り・心配りが普通に行なわれていた日本が、公共の場で外国よりもその分野で劣りつつあるのは問題です。単に仕事としての「おもてなし」だけではなく、私たち一人ひとりの日々の生活の中での気配り・心配りが普通に実践される奥深い「おもてなし」の国にならなければいけないと思うのです。“商売だけの「おもてなし」だけじゃないか、なんて薄っぺらなおもてなしなんだ”と世界から苦笑・嘲笑されないように、国民みんなで「おもてなし」を意識して日々実践していきたいものです。

松下資料館の受付松下資料館の受付
クリスマスの装いでお迎えいたします

みなさまのご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

過去の記事はこちら最新の記事はこちら