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館長からのメッセージ

一度や二度説くだけでは
2019年6月

 松下幸之助は、1983年に海外の青年経営者が集まる会で講演を行いました。その時に、「『新しい人間観の提唱』(松下幸之助著『人間を考える』の一文)を紹介されましたが、この考え方は、松下電器という企業の中で実施されているのでしょうか」という質問がありました。松下幸之助は、次のように答えました。

「完全にみながその提唱文を読んで実施しているということはありません。(会場笑い)こういうことは、近くにおる者は分からないんです。遠くの方から分かってくるんです。そうして、しまいに膝もとが分かる。『灯台下暗し(とうだいもとぐらし)』というのがあるでしょ、日本で。だからね、偉い人があっても、その部下は反対しているんです。そういうもんですよ。(会場笑い、拍手)しかしね、キリストさんでも、お釈迦さんでも、生きている当時はあかんのや。つまり死んで一世紀とかたったときに初めてキリスト、釈迦の教えが世の中に広まってきた。それと一緒ですわ。私のはそんな一世紀もかからない、早い。小さいから。(会場笑い)」 (PHP研究所発行「松下幸之助発言集」より抜粋)

 「灯台下暗し」とは、灯明台のまわりは明るいが、直下は陰になって暗いところから、身近すぎるために気づかないことや分かりにくいことがある、というたとえです。松下幸之助は、この言葉の意味をさらに広く解釈して、自ら考えた教えは足もとの松下電器の社員にはその大事さが十分に伝わっていない、と言ったのだと思います。
 キリストも釈迦も、亡くなった後にその教えが広まりました。これは、艱難辛苦に立ち向かいながらでも説き続けたからこそ、一人二人と賛同する人や伝道者が増えて教えが次第に広まったのだと思います。
 松下幸之助は、大事なことは何度も何度も話したり、目に触れるよう努力し続けてきた人だと言えます。一度話をしたから分かっただろうと私たちは思いがちです。しかし、大事なことだからといって、一度や二度説いたところで十分に普及・浸透するとは限らない。相手に真に受けとめてもらい、実行してもらうには、あきらめることなく何度も説き続けなければならない、ということではないでしょうか。“自分の部下”“うちの子”には何を言ってもダメだ、と諦めるのではなく、まだまだ言い足りないんだと自分に言い聞かせて、「大事なことは何度でも言う」努力を続けていきたいものです。

松下幸之助講演映像松下幸之助の“灯台下暗し”の話は、経営図書館で視聴できます
講演映像「Y・P・O 相談役講演」(82分)

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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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