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館長からのメッセージ

危機感
2020年3月

 今、世界中に蔓延しつつある新型コロナウイルス。WHOをはじめ各国ともその対策に苦慮している状況です。また、その影響から、経済活動にも大きな支障が出てきており、世界同時株安が生じる等の世界景気の悪化も大いに心配されるところです。このような危機的状況を乗り切るためには、冷静な判断のもと強いリーダーシップをもった指導者が、国や企業それぞれに求められるのではないかと思います。
 松下幸之助が考える危機的状況下におけるリーダーとしての在り方について、次のような講演録がありますのでご紹介したいと思います。

「私は先般、ある代議士の方、というよりも、派閥の長といわれる方に会って話を聞いたんです。その方は、やはり日本の今日を憂え、将来を案じ、そして政治はかくなけりゃならないということを話しておられました。私はそれがすんだあとで、その方に話したのであります。

『いま先生が真に日本の今日を憂え、将来を案じて話をされたということは、一面に非常によく分かりました。分かりましたけれども、私はどうも、先生の顔を見ていると、言っていることと、あなたから迫ってくる感じというものは一致していないと思う。あなたは言葉では今危機に直面しているとまで極言されたけれども、あなたの話しっぷりなり、あなたの容貌なりを拝見していると、しごく太平ムードである。ニコニコ笑って話されるということも、お愛嬌としてはいいけれども、今日本はまさに危機に直面しているというのであれば、政治を専業としている、それを唯一の務めとしておられるあなたは、そうニコニコ笑っておられないと思うんだ。お愛嬌をふりまくこともできないだろう。あなたの容貌自体に、ほんとうに迫りくるものが出てこなければならないと思う。そういう点から考えて、先生は非常に偉大な人物であるかもしれないけれども、私は非常に頼りなく受け取った。口では厳しいことを言ってるけれども、先生の全身から受ける感じというものは非常に楽観ムードである。そういうことで、この危機を乗り切ることができるのか、ということを考える』

ということを申したんであります。(中略)やはり真剣でなくてはならないと思う。政策のよしあしということもございましょうが、なんといたしましても真剣に取り組んでいかねばならない。国家のため国民のためどうすべきかということに対しては真剣に取り組むという、強い決意が、やはり一見して全身にみなぎって生れ出なくてはならないと思うのであります。そういう点、私どもは非常に将来に不安を感じるわけであります。」 (「松下幸之助発言集<3巻>」より抜粋~昭和43年12月13日大阪商工会議所における関西経済クラブ講演会での話)

 私たちは言うだけの評論家になってはいないだろうか。当事者としての自覚をしっかり持っているだろうか。危機的状況に対して評論・批判することも大事ですが、その多くは事前にこういうことをするべきだったという他人事のような内容が散見されます。事前にわかっていたのなら、なぜわが身を投じてでも強く提言・行動しなかったのか、と思います。
 特に、リーダー的立場にある人は、危機的・困難な状況下では、他を非難する前に我が事として行動、実践する真剣さがないといけないのではないでしょうか。
 そして、私たち一人ひとりも他に責任転嫁するのでなく、自分でできる範囲で成すべきことを成すといった姿勢を持ちたいものです。
 今日のような危機的状況下では、他を批判するよりも、まずみんなが自己責任の意を強くもって、困難を打破する協力関係をつくることが求められるのではないでしょうか。

松下幸之助発言集 全45巻松下幸之助発言集 全45巻(PHP研究所刊)
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松下資料館 館長 遠藤紀夫

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