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館長からのメッセージ

同じ台本なのに
2018年1月

 新年あけましておめでとうございます。本年も引き続き館長からのメッセージをよろしくお願いいたします。

 上方落語に「貧乏神」という有名な噺(はなし)があります。働くのが嫌で、そのために女房に逃げられて貧乏暮らしをしている男のところに貧乏神がやってきた件(くだり)をご紹介しましょう。

貧乏神:ちと、精出して...働け...精出して...働け
   男:へっ、あんたほんまに貧乏神か? 貧乏神が「精出して働け」てなこと言うわけないやないかい。貧乏神ちゅうもんは人間が
     貧乏してんのを見て、「へへへ...へへへ」と笑うてるてのが、それが貧乏神やないか?精出して働けてなことを言うのが
     貧乏神か?
貧乏神:お前は少し勘違いをしておる。人間が貧乏するのを楽しむ、貧乏神はそういうものではない。人間が一所懸命働く、その養分
     を吸い取ってわれわれは生きている。 えぇ、人間が一所懸命に働きゃこそ、養分と言うものもわれわれは吸い取ることが
     でけんねや。えぇ、お前とこ、吸い取る養分も何もないやないか。まったく、どんならんで。えぇ、働け!
   男:......けったいな貧乏神やなぁ...よう働かん!

 台本として読むと「なるほど」とは思いますが、大笑いするかというとそれほどでもありません。ところが、名人と言われる落語家が語ると、お腹を抱えるほど笑ってしまいます。なぜ名人はお客様を大笑いさせることができるのか。そこには、お客様に笑ってもらいたい、という熱意があるからではないでしょうか。口調や間の取り方、表情等を何度も工夫して、苦しいほど練習しているからお客さまの笑いを誘うのだと思うのです。そして、同じ台本であるにもかかわらずその落語家の持ち味によって、違う味わいを楽しむこともできます。個性の違う落語家がそれぞれの練られた芸を披露する。だからファンは大いに楽しむことができるわけです。
 販売・営業という仕事をしている人にも同じことが言えると思います。売上成績のいい人とそうでない人、どちらも同じマニュアルに基づいて説明しているのに大きな差が生じるのは、お客さまの心を動かす味のある説明をしているかどうか、それだけの工夫や訓練をしているかどうかの違いがあるのではないでしょうか。
 また、弁舌さわやかな人が必ずしも好成績を出し続けるとは限りません。朴訥なのに好成績を継続している人がたくさんいます。お客さまに買っていただいてぜひ幸せになってもらいたいと願う心をもって誠心誠意の接客をしていれば、マニュアルにも魂が入りすばらしい説明・応対に昇華していきます。こうした姿勢にお客さまは心を動かされ、この人から買おうという気持ちになるのだと思います。まさに熱心な姿勢が工夫を生み、その人の持ち味・個性を磨きあげていくということになるのではないでしょうか。
 新年を迎え、私もさらにお客さまの幸せを願い、一層魂の入った応対を心がけようと思った次第です。

松下資料館の受付戌年にちなんで
松下幸之助ファンの日本画家 寺岡多佳先生からいただきました

みなさまのご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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