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館長からのメッセージ

叱る、叱られる
2018年11月

 最近は、叱る上司や先輩が少なくなってきたように思います。叱ると後味が悪いし、嫌われて人間関係もぎくしゃくしやすい。場合によっては、パワハラだと訴えられるかもしれない。さらには、叱られると立ち直れなくなるような打たれ弱い人も増えてきました。ますますもって叱れない時代になってきたような気がします。私も叱るのは得意な方ではありません。しかし、叱れない上司・先輩ばかりだと、部下や後輩は仕事に対する正しい考え方・進め方を知らないまま会社生活を送ってしまいかねません。これは会社にとっても本人にとっても大変困ったことになります。
 私たちは、全知全能の神様ではないのですから、完璧に何でもこなすということはなかなかできるものではありません。時には、大事なことを見落としたり、他の事に気を取られて忘れてしまうことがあります。また、うっかりしていてミスをしてしまった経験をお持ちの方もいると思います。そういう時に、おかしてしまったことについて、上司や先輩から注意・叱責を受けるわけです。時には「うるさいな」と感じるかもしれませんが、注意され、叱られることによって気づいたり、今後言われないようにしたいと、努力して要領も覚えていくようになります。もし、注意もされない、𠮟られもしないならば、その人のためにも、また会社のためにもならないのではないでしょうか。
 松下幸之助は、叱ることは私事ではなく公事であると考えていました。

「人を使って仕事をしていれば、時には叱ったり、注意したりしなくてはならないこともある。そういうことは、人情としては、されるほうもいやだけれども、するほうだってあまり気持ちのいいものではない。だからついつい面倒だとか、いやなことはしないでおこうということになりかねない。しかし、企業は社会の公器であり、人を使うことも公事であるとなれば、そうした私的な人情でなすべきことを怠るのは許されないということになるだろう。だから、信念をもって言うべきことを言い、叱るべき時には叱るというようになると思う。そこに非常な力強さが生まれてくる。」 (松下幸之助著「事業は人なり」PHP研究所刊より)

 社会に役立つ人材になってもらうために叱るんだ、という考えをしっかりと持っておかなければいけないということですね。しかし、どう叱ればいいのでしょうか。松下幸之助は次のように考えていました。厳しく叱るか、優しく叱るかは、人それぞれの特質があるのだから、その持ち味で叱ればいい。しかし、作為的であったり、私心や邪心をもって叱ることは厳に慎まなければならない。自然に素直に叱ることが基本である。そして、叱った後は、部下や後輩の人格を肯定しながら、きちんとフォローをする。その姿勢を大事にしてきたのが松下幸之助だったように思います。
 私たちは、ほめられてばかりだと、つい増長したり、油断をしてしまいがちです。注意されたり、叱られることによって、自分のいたらなさに気づくことができます。注意される、叱られるということはありがたいことだと謙虚に受け入れることが、進歩・成長することになるのではないでしょうか。
 叱る方も、叱られる方も、公事という考えをしっかりもつことが大事ですね。

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松下資料館 館長 遠藤紀夫

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