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館長からのメッセージ

素直な心になれない松下幸之助
2017年6月

 松下幸之助は「素直な心」を提唱し、自らその実践もしていた人でした。生前から「経営の神様」と謳われ、今日ではますます神格化されてきているようにも思えます。松下資料館で仕事をしていると、神様・松下幸之助を慕って来られる方が後を絶ちません。確かに私のような凡庸な人間からみると、松下幸之助は神様に近い天才としか思えません。
 最近、松下幸之助といっしょに研究活動をしていた元PHP研究所専務の岩井虔氏の話を聴く機会がありました。ある時、松下幸之助が岩井氏に次のようなことをふと漏らしたそうです。

「岩井君、最近、わしはなかなか素直な心になれんのや」
「はあ」
「会社の業績があまりよくない。そうすると、幹部の長所が見えなくなって短所ばかりに目が行ってしまうんや。素直な心で物事を見れんのや」

 経営の神様・松下幸之助が、“素直な心になれない、素直に物事を見ることができない”と、自らの本心を部下に打ち明けていたことを聞き、この人は決して神様ではないと思いました。生身の人間なんだと。さらに驚いたことは、部下に本心を明かす素直な人であるということ、そして自分がとらわれた心になっていることに気づいているということです。すごい人です。
 松下幸之助は、素直な心について次のように本に書いています。

 「冷静さを失ってあわてたり、あせったり、また平常心を失って興奮したりするということは、とりもなおさず、心が何かにとらわれていることを示していると思われます。(中略)だからそういうとらわれがなくなったならば、おのずと冷静さをとりもどし、また平常心、平静心を保つこともできるのではないでしょうか。そして、素直な心というものは、まさにそういうとらわれのない、すっきりとおちついた心なのです」 (「素直な心になるために」PHP研究所刊より)

 松下幸之助は素直な心になかなかなれない自分に対して、毎朝、毎晩、“素直、素直”と自問自答し続けた人でした。日々そう念じ続けていると、ある時、素直な心になれていない自分にハッと気づくことができると言っています。それが大事だというのです。私たちはともすればとらわれた心で物事を見たり考えたりしがちです。また、平常心を失ってとんでもないことを言ったりやってしまったりしてしまうこともあります。天才とも言うべき松下幸之助でも自問自答をして努力し続けているのですから、私も毎日、素直であるかどうかを自ら問い続けていかなければいけないと反省する今日この頃です。

「素直」を書している松下幸之助「素直」を書している松下幸之助
※展示室パネルより

みなさまのご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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