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館長からのメッセージ

正直が一番
2019年3月

 私は学生時代に、就職活動で失敗したことがあります。ある大手薬品会社さんで、筆記試験や人事の方との面接等を経て、運よく最終の役員面接までたどり着くことができました。私が経済学部生ということもあったからか、役員の方から、「経済のどの分野に関心がありますか?」と質問がありました。大学ではほとんど勉強らしきものをしてこなかったのに、つい「金融には大いに関心があります」と、言ってしまったのです。そこから、金融についての質問が矢継ぎ早にありました。金融についてそれほど勉強をしてこなかった私は、しどろもどろで答えました。役員の方は、「この学生は、でまかせで答えてるな」と、厳しく評価したと思います。案の定、最終面接で落ちてしまいました。その時のことを反省するとしたら、「スポーツばかりやってきて、あまり勉強はしませんでした」と、正直に答えればよかったと思っています。勉強をしてこなかった私の売りは、スポーツを楽しみながら頑張ってきたことなのです。それを正直に言うべきだった。あたかも勉強してきたかのように嘘を言ったがために、簡単に見ぬかれてしまったわけです。嘘はすぐに露見するということを、この時大いに自省しました。
 松下幸之助は、正直な姿勢について、次のように述べています。

「人はおのおのその素質が違うのですから、いくら知恵をしぼって自分を粉飾してみたところで、自分の生地はごまかすことはできず、必ずはげてきます。そして、そうなれば、一ぺんに信用を落とすことになってしまうのです。私は、正直にすることが処世の一番安全な道だと思います」 (「松下幸之助 一日一話」PHP研究所刊より抜粋)

 私は、ありのままの自分を正直に知ってもらうことの大事さを、この就職面接から学びました。それからは、他人から自分を良く見てもらいたいがために、知りもしないことを知ってるかのように話したり、できそうもないことを無理して引き受けたり、というようなことをできるだけしないようにしてきました。相手からがっかりされることもありましたが、私の気持ちは軽くなりましたし、仕事や人間関係がそれで悪化するということはほとんどありませんでした。
 自分を粉飾してしまうと、ごまかしがきかなくなり化けの皮はすぐはげるものです。そして自分を粉飾すればするほど、自らを苦しめることにもなりかねません。場合によっては、相手に迷惑をかけることがあるかもしれません。反対に、ありのままの自分を知ってもらう正直な姿勢に徹していれば、自らの心が軽くなるだけでなく、「嘘のない人だ」と、相手から信用されることもあるのではないかと思います。経験上、正直が一番、と考える今日この頃です。

「松下幸之助 一日一話」「松下幸之助 一日一話」
松下幸之助の考え方を一日一話の形に編集したものです

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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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