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館長からのメッセージ

人間はダイヤモンドの原石
2019年12月

 先日、居酒屋で友人たちと談笑をしていると、向こうの席から、その場にいない部下を大声でけなしている管理職らしい方の話が聞こえてきました。問題のある部下に閉口しているようで、責任者も大変だなと思いながら聞くともなしに聞いていました。しかし、その人が部下をこきおろし続けていることに嫌気がさしてきた私たちは、とうとうそのお店を出てしまいました。なぜ私が嫌な気持ちになったのかと言いますと、次のような松下幸之助のエピソードを思い出したからです。

「昭和三十年代の後半、あちこちに事業所が増えつつあった松下電器の急成長時代のことである。ある営業所長が、幸之助に、自分のところは新しい職場で、いろいろなところから人をまわしてもらっているが、どうもいい人が来ない、役に立たない人が多くて困っているという話をした。それを聞いた幸之助はこう言った。『新しい職場の責任者はたいへんやろ。けどな、松下電器の社員には役に立たない人はおらんはずやで。もともと、そんな人を採用しているつもりはない。きみは劣る人ばかりで困ると言うが、もし、そういう人があれば、その人を引き立てて、その能力が最大限に発揮できるようにすることを考えるのが責任者の役目やないか。それを新しい職場だから来る人がみなよくない人だ、と決めつけてしまっては、きみ、いかんやないか』」 (PHP研究所刊「エピソードで読む松下幸之助」より抜粋)

 部下に対する基本的な考え方を松下幸之助から知ったのがこのエピソードでした。部下が育っていないのは責任者の問題であり、責任者は自分の責任を全うしていないことを自覚しなければならないのだと気づかされました。
 松下幸之助は、「人間はダイヤモンドの原石のような素晴らしい特質をもっている」と考えていました。

「私は、お互い人間はダイヤモンドの原石のごときものだと考えている。ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、さまざまに異なる、さん然とした輝きを放つのである。同様に人間は誰もが、磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質を持っている。だから、人を育て、活かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識し、それぞれの人が持っているすぐれた素質が活きるような配慮をしていく、それがやはり基本ではないか。もしそういう認識がなければ、いくらよき人材があっても、その人を活かすことはむずかしいと思う。」 (PHP研究所刊「松下幸之助 一日一話」より抜粋)

 部下それぞれが持っている無限の可能性を信頼するという認識に立って人づくりをする、それが松下幸之助の人材育成の基本スタンスでした。
 私たちは、相手の短所ばかりに目が行きがちで、長所を見ようとしないことがよくあります。そのような人の見方をしていると、ダイヤモンドの原石とも言える素晴らしい相手の素質が見えなくなってしまいます。この部下にはどのような長所があるのか、意識してそういった見方・考え方をしたいものです。
 「人間はダイヤモンドの原石のような素晴らしい特質をもっている」といった考え方をしっかり持っていれば、人材育成の仕方も違ってくると言えるのではないでしょうか。

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松下資料館 館長 遠藤紀夫

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