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館長からのメッセージ

衆知を集める
2018年10月

 松下幸之助は、小学校を4年で中退し、9歳で大阪の船場に丁稚奉公をしています。そして、18歳の時に関西商工学校の夜学に通いますが、授業についていけず挫折、退学しています。それ以降、きちんとした学校教育を受けていません。わからないことや困ったことがたくさんあったのではないでしょうか。しかし、私たち以上にたくさんの困難を乗り越えてきた人です。では、どのようにして道をひらいてきたのか。おそらく、多くの人に聞いたり、相談をしてきたのだと思います。その経験から、“衆知を集める”ことの重要性を考えるようになったのではないでしょうか。

「私が、衆知を集めるということを考えたのは、一つには自分自身があまり学問、知識というものを持っていなかったから、いきおい何をするにもみなに相談し、みなの知恵を集めてやっていくことになった面もある。いわば必要に迫られてやったことだといえなくもない。しかし私は、いかに学問知識があり、すぐれた手腕を持った人といえども、この“衆知を集める”ということはきわめて大切だと考えている。それなしには真の成功はあり得ないであろう。というのは、いかにすぐれた人といえども人間である以上、神のごとく全知全能というわけにはいかない。その知恵にはおのずと限りがある。その限りある自分の知恵だけで仕事をしていこうとすれば、いろいろ考えの及ばない点、かたよった点も出てきて、往々にしてそれが失敗に結びついてくる。やはり“三人寄れば文殊の知恵”という言葉もあるように、多くの人の知恵を集めてやるに如(し)くはないのである。」 (松下幸之助著「実践経営哲学」PHP研究所刊より)

 衆知を集めることによって、お客さんや社会が求めていることが見えてきます。また、新しい色々な技術・ノウハウも得ることができます。全社員それぞれが衆知を集めれば、膨大な知恵・知識・情報が会社に集まり、その結果、様々な工夫・アイデアもその中から生まれてきます。このように、松下幸之助は全社員で衆知を集めた経営を実践してきたからこそ、会社を長く発展させることができたのではないかと思います。
 衆知を集めることは、仕事だけではなく人生にも応用できます。困った時、チャレンジしなければならない時に衆知を集めれば、ヒントを得ることができたり、解決の道筋が見えてくるでしょう。
 しかし、衆知を集めるために人を集めて会議や検討会を開いてばかりしていると、招集するのに手間暇がかかるために時を失してしまいかねません。松下幸之助は、立ち話や電話でどんどん訊いていくことも厭いませんでした。まさに、“今なすべきことをなす”姿勢で衆知を集めることもしていたようです。

 最後に、“衆知を集める”心得を、私なりに考えてみました。それは次の通りです。
①強い熱意をもつ(どうしても知りたい、教えてほしいという熱意です)
②謙虚である(居丈高、高飛車、説得的な態度では人は教えてくれません)
③素直な心で訊く(とらわれた心、固定観念があると正しい判断ができなくなります)
④相手の立場を考慮する(相談する相手が快く話せるように心配りをする)
⑤感謝を忘れない(心からの感謝があると協力者は増えます)
 他にもあるかと思いますが、参考にしていただければ幸いです。

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松下資料館 館長 遠藤紀夫

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