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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「極める時代のホスピタリティ ~ミッションが働きを決める」


実は真々庵にお招きいただいたのは上甲 晃(じょうこうあきら)先生だったんですね。その時に「高野さん、お茶点ててあげるからいらっしゃい」と言われてご案内いただいたときに、真々庵の入り口のすぐそばで上甲先生が、ぐっと振り向いて「高野さん、リッツカールトンの体質って一言で言うとなんなの?」こういう質問がポンととんできたんです。僕は瞬間的に「コツコツです」って答えちゃいました。そしたら、「ここと一緒だ」とおっしゃいました。「松下と一緒だね。そうか、そういうことか」とおっしゃってました。「なんか気が合う気がすると思ったら、そこか」とか言われて、私はまだ全然分かんないんですけど、初めてお会いしていきなりお茶でドキドキしてるもんですからね、こちらはまだ共感共鳴できるとこまでいってないんですけど、先生がリッツカールトン少し勉強されて、何か気になるなと思ってたらしいんです。で、企業体質がコツコツってたまたま私がポンと言ったもんですから、「ああ、松下と一緒だ。そこだな」なんておっしゃってました。たぶんそういうことっていうのは、国とか人種とか仕事を飛び越えちゃうものなんだろうなと思います。だから哲学なんですね。

で、そういう哲学の元で何が決まっていったか、そこで働いている人たちの言葉が決まっていくんだろうな。その人たちが使う言葉が決まると、どんな行動が起きるかということが非常に明確になっていくんだろうというふうに思います。

今日は、実はシュルツィの話をしていると、それだけで3時間くらいかかっちゃうんですね。そんな時間がありませんので、『極める時代』というひとつのテーマの中で、じゃあ極める時代というのは誰がどういうふうに決めるのか。これ決めるのは自分しかいないんですね。極める時代のキーワードというのは自分自身がどこまで極めることができるか、なんだろうな。例えば経営者であるなら、あるいは社員であるなら、極めるってどういうことなんだろうってことを考えていかないと、見えないと思うんです。

例えばおもてなしということばがあります。ホスピタリティということば。サービスということば。これみんな大事な今の時代を生き抜くキーワードですよね。じゃ、おもてなしという言葉、この原点ってどこにあるんだろうというふうに考えていくと、これは大阪の開業のときに何人かのキーパーソンと話し合いをしたときに、原点に戻ってみようよということで、サービス、ホスピタリティを英語の辞書でみんなで引いてみたんです。オックスフォードの辞書を引いたら、ちゃんと載ってました。広辞苑で「おもてなし」って引いてみたんです。みなさん引いてみたことあります?載ってないんですよね。広辞苑に載ってないです。なぜ載ってないのかということを考えてみたんです。そうすると理由はひとつしか見つけられませんでした。じゃ、広辞苑ってなんだろうということを考えてみると分かるんですね。広辞苑というのはおそらく今の時代、ほかにもたくさんありますけども、おそらく一番信頼に足るすべてのことばを網羅した辞書ですよね。そこに載っていない。すなわち「おもてなし」は言葉ではないということですよね。これ以外考えようがないんです。

じゃ、言葉でないなら何なんだろう。概念だろう。哲学のような概念だから広辞苑に説明のしようがない。じゃ、この概念の原点はどこからきているのかということをみんなで考えたときに、十七条憲法に出会ったんです。第一条。和をもって貴しとなす。これに出会ったんですよね。そこですべての、リッツカールトンの中で我々の持っていたモヤモヤが解消されました。「和を以って貴しとなす」この中で言っている「和」ってなんだろう。これは例えばもたれあったりとかあるいは馴れ合ったりというそういう人間関係ではなく、ひとりひとりがお互いを尊重し、相手を認め慈しみ大切に思う。そして支えあう。それが日本人が本来持っているべき和の精神だろうと。それを大事にしようという概念を決めてくれたのが第一条の憲法ですよね。概念です。哲学といってもいいと思います。日本人の心の柱、心柱を支えている概念、哲学がそこにすべて集約されているんじゃないかなということに気がつきました。そうすると、これが見えてきたんですね。『以って為す』もてなすですよね。おもてなしの原点です。もてなす。じゃ、我々はリッツカールトン大阪を開業することで何を以って、何を為すんだろう。そもそも我々がそこで働くことの意味は何なんだろう。ひとりひとりの従業員が、あるいはリーダが日々何を以って何を為し続けることがリッツカールトンのためになるんだろうということを考えてみる。そうすると、それぞれの立場で役割が違うことが分かりますよね。メイドという役割がある、営業と言う役割がある。ドアマン、ウエイター、フロント。みんなそれぞれ役割を持たされています。でも、違った役割の中でも概念はみんな一緒なんです。もてなす。何を以って何を為すのか。もしかしたらお客様にほとんど顔を合わせることがないポジションの人もいます。交換台、それからメイド。廊下で行き違ったりしますけれども、誰が自分の部屋を掃除しているかほとんど分かりません。自分がお部屋に入ったときにはメイドはすでに掃除を終わらせています。そして自分がチェックアウトした後にメイドが来て掃除をします。もしかしたらお客さんとメイドは顔合わせることはないかもしれない。何年も。顔あわせることがないお客様のために自分は何を以って何を為すことができるのかということを考えていくと、このもてなす原点を明確な概念としてあらわす必要が生じてきたんです。で、リッツカールトンが考え付いた原点は、我々はお客様と、あるいは人との出会いに感謝することをもって、その人の心にイキイキワクワクとした思いを届けることを為す。この以って為すにたどり着きました。これは概念の問題なんです。まったくポジションが違う、役割が違うところにいる人にもすべて共通する概念なんです。人との出会いに感謝することを以ってその人の心にイキイキワクワクとした思いを届けることを為す。これができたらリッツカールトンはホテルではなくひとつのアイデンティティを作っていくことができるじゃないか。そして自分たちの会社の価値を測る唯一の方法は何かというと、その会社ができた前と後とで何か世の中に新しい価値を生み出したかどうかということですよね。

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