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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「極める時代のホスピタリティ ~ミッションが働きを決める」


でもほとんどのホテルが持っているのはハンディキャップルームです。入った瞬間に分かるんです。取っ手がザーッとついている。そしてバスルームに入ったら、明らかにここに車椅子で来てこう入れるようにできているんだなということが分かる。やっぱり違和感があるんです、普通に入って行って見た時に。ご自宅だったらね、例えばご自分の親が年取ったときにやっぱりそういうふうにやる。それはそれで慣れてくるんですけど、同じようなものがホテルの部屋に入ったときにあると、やっぱり違和感があります。だからハンディキャップルームはみんな作るんです。でもユニバーサルデザインルームは作らない。なぜなら費用かかるからです。そして知恵が必要だからです。それともっと必要なのは何かというと、社員教育が大変だからです。大変だからといっても、そんなにものすごいお金と費用かかるわけじゃないんですよ。でも普段やらなくてもいいことやらなければいけない。そうですね。

たとえばみなさんとちょっと考えてみたいんですよね。ちょうど2020年の東京オリンピックがもうじきやってきます。その時に日本は世界中の人に、自分たちはユニバーサルデザインにおいては世界で一番進んでいる国ですよ、ということを見せなければいけないわけです。そうですよね。

たとえば、みなさんが今日友人5人と食事に行こうと、ふっと思ったとします。そうするとどこのレストランに行こうかと考えるときに、今日何食べようかと思いますよね。和食がいいかなぁ。たまには中華がいいかなぁ。ああ、焼き鳥がいいかなぁとかね。鉄板焼きがいいかなぁとかね。そう考えますよね。

私の知り合いでハンディキャップを持っている人いっぱいいます。彼らはどういう選択肢で店を選ぶか。入れるか入れないかなんです。それ以外の選択肢がないんです。何を食べたいかということではなく、入れるお店に行くというとこからスタートします。

たとえばそういうところで当たり前に生活している人たちの気持ち、我々は分かっているつもりで分からないですよね。じゃ、そういう人が例えば車椅子で入っていきます。そうすると、まず入り口で入れたら万々歳。そしてテーブルに行って、その車椅子のままスーッと入れるような高さのテーブルを、ほとんどのところが作っといてくれます。そこに案内をされて「どうぞ」。ドヤ顔でね「ちゃんと作ってあるでしょう。はいどうぞ」みたいな感じで案内されます。彼らの心理はどうなっているかというと、「高野さん、この車いすというやつはあんまり乗り心地いいもんじゃないんだよ。一日乗ってると蒸れるしさ。いいレストランに行った時くらいは、あの快適そうな椅子に座りたいんだよ、ほんとはね。でもそこの人がわざわざ高いテーブルを作ってそこに案内してくれたら、僕らは我慢してありがとうって言わなきゃいけないんだよ」とおっしゃってました。我慢してありがとうって言ってるんです。それでなくても我慢することの多い人達が。健常者が一生懸命に気を遣ってくれたことに対して、彼らは我慢してありがとうと言ってる現実があるわけです。たとえばそういうことに何人の人が気が付いているか。これ、おもてなしですよね。

異文化コミュニケーションという言い方がありますけれども、この異文化というのは必ずしも言葉が違うとか宗教が違うとか、そういう話じゃないですよね。すべて文化としてとらえた時に、彼らにとってみたら彼らの文化があるわけです。ハンディキャップを持っている、障害を持っている人の文化がある。たとえばそういうところにきちっと向き合いながら、ものごとをきちんと見ていくと全く違った景色が目の前に広がってくると思います。そうすると分かってくることがありますよね。世の中に障害者なんていないんです。我々健常者が作った仕組みが、彼らにとってみたら障害になっているだけなんです。我々が作った仕組みですから、我々は普通に使える。でも彼らにとってみたら障害なんです。だから彼らを障害者って我々は呼ぶんです。変ですよね。

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