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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「極める時代のホスピタリティ ~ミッションが働きを決める」


たとえばそういうことに気が付いて、じゃあ全部直せるかというと直せないです。現実的ではない。現実的ではない中で我々ができることは何か。最小限度、たとえば入り口の段差を3センチはないだろうと。ドアを広げてくれるんだったらば、これをせめて1センチまで、理想的には5ミリ。この5ミリと1センチの違いは車椅子に乗ってみるとわかりますよね。崖っぷちの違いがあります。1センチが高いんです。ものすごい力が要ります。女性なんかとくに大変です。最近腕っ節の強い女性もいますけどね。でもやっぱり全然違うんです。この5ミリに気が付くかどうか。1センチでも努力をした分、それはそれでいいんです。でもハードウェアの限界があります。全部直すわけにはいかない。でも、このハードの限界を補うものは何かというと、ハートですよね。これはみなさん誰でもご存知です。だから自分たちのハートを磨き上げることで、おもてなしというもの、ホスピタリティというものが今の時代きわめて必要だということです。ちょっとした人に対する優しさとか、ちょっとした思いやりとか慈しみというものが、すべてそのギャップを埋めてくれます。

ところがここ1・2年ずーっと見ていて気が付いたのは、どうもそれに気が付かなくなってきてしまっているんじゃないかということなんですね。それで今年の11月に、今までとは全然違うかなり冒険的なタイトルで、「愛でつながらない生き方」というのを書いてみました。これはつながってはいけませんとか、そういうことじゃないんです。

要はどういうことかというと、一昨日もあったんですけども、心がほんわかする瞬間って、自分たちの身近にいっぱいあるんですよね。たとえばおじいちゃんが、70歳くらいのおじいちゃんが座ってるんですね。地下鉄の中ですよ。そしたら、20代前半くらいの女性が荷物を持って、小さい子供連れて乗ってきたんですね。そしたらそのおじいちゃんスッと立ってね、その子のところに行って「こっちいらっしゃい」。彼女が「とんでもないです。どうぞ座っててください」と言うのに、「いいから、いいから」と言ってそこに座らせたんです。「あー、すいません。ありがとうございます」。やっぱりうれしそうでした。子どもと荷物も、それで助かりますからね。でも、それに気が付く人がいないんです。パッとまわり見たら、みんなスマホ見てました。何十キロ何百キロ離れた人と、どういう交信をしているのか私は知りません。でも目の前に起きているそういうホッとする瞬間に、今我々日本人は気が付かなくなっているんですよ。気が付かない仕組みの中で生きてるってことに、もう何年か前に気が付いて、この間もそれを目の前に見て、誰か何人か気が付くかなと思って周りをパッと見たら、だれもそっちに目すらやってませんでした。みんな打っていました。半径2メートルからだろうと思うわけです、先ずは。あるいは半径10メートルでもいい。半径10メートルのことにきちんと自分の目と思いがいかない人が、100キロ先の人をそんなに幸せにできるとは思えないんです。

それはまぁ自分の親と大事な話をしてる、これは別ですよ。そうではない時に。どうもそうとは思えない。横断歩道渡りながら、乳母車押しながらお母さんがスマホ打ってるの見るとドキドキします。「うわー、危ない」と思うんですけどね。横断歩道で子供の命のこと考えるよりも大事なスマホのメッセージってあるかなって思うんですが、どうもあるらしいんですね。分かんないですよね。その人の価値観だから、私はそれ以上はその場面では言いませんけどね。でも、フッて考える時間って必要じゃないかなって思うんです、そういう時に。

おもてなしもホスピタリティもそんなに大げさなものでも何でもないんです。そんなに大そうなものでも何でもないんです。日本人昔から当たり前のように自分たちの生活の中にあったんですよね。それを昔の田舎の家庭環境の中なんていうのは、自然にそれを教えていく仕組みがあったんですね。誰が教えてくれるか。じいちゃん・ばあちゃんです。

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