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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「極める時代のホスピタリティ ~ミッションが働きを決める」


もう一つ別の視点から考えてみると、例えば食を考えてみると、また違ったものが見えてきますよね。先ほど言ったとおり、私は28年生まれですからまだ戦後の貧しさの中にいました。家に電気がきたのが、たぶん私が4歳のときだったと思います。それまで普通にランプ使ってましたからね。電気きてる家もあったんですよ、金のある家は。うち、まだね電気きてなかったんです、その頃は。でも4歳になった時に家の中に電気がきて、裸電球が下がってるんですね。それを引くと部屋の中が明るくなる。これやらなくていいわけです。うれしかったですねー。妹と二人で、どっちが先に紐を引くか競争してた。最初に暗い家の中を明るくする。紐を引くと部屋が明るくなる。いまだにその感触覚えてますよ。

水道がきたのが6歳のときです。これははっきり覚えてます。小学校に入る前です。もう水汲みに行かなくていい。井戸に行かなくていいって、うれしかったですね。捻ったら水がジャーっと出た感触、今でも覚えてます。昨日のご飯忘れてるんですよ。何十年前のあの感触ってね、おもしろいもんです、忘れないんです、人間ってね。でも、そういう時代の食生活ですから、一応兼業農家で親父は農協にも勤めてたので兼業ですけど、作ったお米は大事な現金収入の元ですから、家ではそんなに食べないんですね。だからだいたい芋ご飯といって芋のほうが多いようなご飯とかね。

田舎にはオヤキ文化があった。オヤキとかスイトンとか。それが普通でした。何の疑問も感じなかったんです。とにかくお腹いっぱいになればいい。その当時は胃袋でご飯を食べていた。そういう時代です。胃袋なんですね。それがだんだんだんだん豊かになってくるんですね。世の中に物があふれてきて。農協にも大型の冷蔵庫が入って、マグロなんかがくるようになりました。刺身の。小学校3年か4年のころです。初めてマグロの刺身というのを、うちの親父がね切れ端ですけどね、持ってきて食べた時に、世の中にこんなうまいもんがあるのかと感動しましたね。ちょっとですけどね。

でもだんだんだんだん何が起きたかというと、今度は味はどうだろう。口で食べる時代がやってきたんです。胃じゃなくて口で食べる時代。贅沢にね、あれはまずいだのこれはうまいだの、言い始めたんです。

さらに時代が過ぎていきますよね。そうするとどこで食べ始めたかというと、誰が作ったんだ、どこで採れたんだ、いつ採れたんだ、これは旬かどうかとかね。頭で食べる時代がやってきましたね。そして今、極める時代になった時、何が起きてるか。これを食べることが、どういう意味があるんだ。これを食べることで誰が助かるんだ。これを食べることで、自分がどんな貢献ができているんだ。今、福島のお米を食べることで自分はどんな価値をあの人たちに届けることが出来るんだ、といって心で食べる時代がやってきた。

胃で食べてたんです。でも、口で食べる時代が来て、頭で考えて食べる時代が来て、今心で食べる時代がやってきています。そうやって考えると、全ての企業の中で起きていることって、同じような流れが出てきてることに気がつきます。今、物が売れない時代。売れるわけが無いんです。あふれてますから。でも、物はどんどん人は売ろうとしていますよね。でも世の中で物を売ってる人の悩みって何かっていうと、売れないということです。売れないです。私の友人たちでも、車を売っている人がいます。保険売ってる人います。観光地で観光誘致をしてる人がいます。みんな売ろうとしているんです。買ってもらえない。売れない。売れない理由ってひとつしかないですよね。あなたから買う理由が無いからです。それ以上でもそれ以下でもない。物ではないです。あなたから買う理由さえあれば、人はあなたを探して、あなたにしか頼みたくないんですよ。あなたから買いたいんですよ。あなたに任せたいんですよ。あなたのチームだから、あなたの会社だからお願いしたい。言ってもらえるはずなんです。

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