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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「松下幸之助のサービス哲学」


11月28日といいますと、ちょうど紅葉がいっぱい落ちている時期なんですよ。それで行って、上司に挨拶をしまして、最初に上司に言われたのが、「今日は庭が荒れているから掃除や」と。ということで、竹箒と竹かごと半纏をあてがわれまして、広い庭で掃除をずっと一日、5時過ぎまでやったのが、初日でございます。そして終わったら、「今日はもう帰ってよろしい」ということ。私はビルの中で、工場の事務所とかあるいは営業所とか本社とか、そういう所で仕事をするものとばかりと思っておりましたら、一日がそんなんで、〝えらいとこに来たなあ〟と一瞬思ったんですけど、縁がありましてね。最初は3、4年というように言われておったんですけれど、ずっと居ついてしまいまして、67歳までPHPで仕事をさせていただいたということでございます。ですから、松下幸之助さんの70歳から、亡くなった94歳まで、ちょうど24年間、比較的近くに、まあペイペイですからそんな近くでというふうではないですが、それでも最初入った時には真々庵にいたのが12、3人でしたので、身近に接することが出来た。そういう面ではたいへん貴重な経験が出来たかなというように思っております。

PHPはご存知の方が多いと思いますけれど、昭和21年11月3日に松下幸之助さんが創った研究所でございます。客観的に見て、幸之助さんの一番苦しかった時代じゃないかなと思います。戦争で全てを無くしてしまった。戦前に海軍の要請によって、昭和18年ですけれど、飛行機会社とか造船会社とかを作ったりしました。飛行機も試作機を3台だけ飛ばして結局終戦。そこにお金をどんどん注ぎ込んで、それが全く返ってこなかった。モラトリアムというのでしょうか、返ってきませんでしたので、一番苦しかった時代だったんだと思います。やはり世の中が良くならなければ、その世の中で活動する企業も良くならないし、人々の幸せもないんじゃないかと。だから社会をとにかく良くしなければならない、政治を良くしなければならない、その時にたいへん強く感じたようでございます。

人間とは本来こんなものではない、人間とは本来繁栄も平和も幸福も招来することが出来る能力を持っているのではないか、それがいろんな事に捉われて発揮できてないのではないか、という人間に対する疑問をですね、持ちまして、人間というものをもう一度勉強してみたい、研究してみたい、そしてその人間の本性が活きるような社会、繁栄と平和と幸福が訪れるような社会とはどういうものだろうかということを考えたいというようなことで、たいへん苦しい時代でしたけれども、PHP研究所を立ち上げたわけなんですね。そんなことで、私が入った時には、真々庵で研究活動をやっていたわけです。

当事、ちょうど松下電器が販売制度の大改革をしておったんですね。幸之助さんは36年に会長に退いておりましたけれども、たいへん情況が悪くなってきたわけですね。40年不況というのがありましたけれども、その前にだんだん悪くなってきていました。それで販売制度の改革をやらなあかんということで、会長でありながら営業本部長代行に返り咲きましてね、現役に。ちょうど営業本部長が病気療養中だったんですが、先頭に立って改革をやっていた時代でございます。たいへん忙しかったのではないかと思います。しかし真々庵には、当時週に3回ほど来ておったんですよ。後で考えたらよくあれだけ来られたなあという感じがするんですけれども、やはり真々庵に来て、思索する、あるいは若い人と研究、議論をする、あるいは景色を見る、そういうことがたいへん心の癒しになっていたのかなあという感じがいたしますね。来て、心を落ち着けて。もちろんお茶室もございます。唯一の趣味と言っていいお茶をやっておりましたのでね。お茶を一服飲んで、心を落ち着ける、思索をする、そういうところに楽しみといいますか、癒しを求めて来ておったんかなというような感じがします。

何をやっていたかということですけども、一つは研究会ですね。PHPの研究をやる。これはいろんな幅広いテーマ、人間とは何かとか、あるいは政治はどうあるべきか、とか、毎週来る度にそういう研究会をやるわけですね。十畳の大きな部屋がございましてね、座敷と呼んでおりましたけれども、回りに廊下がずっとあって、外が庭になっておりました。昔はOHPとかありませんので、模造紙にテーマや論点などを書いて、そして鴨居にセロテープで貼りましてね、議論を重ねていく。ちなみに私が入った時に何をやっていたかと言いますと、「日本国憲法はこのままでいいのか」ということで、日本国憲法の前文が、きれいな字で書かれていて、議論をしているところでした。そういう研究会ですね。

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