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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「松下幸之助のサービス哲学」


二つ目は、会長といえども、松下電器の幹部の方がいろいろ報告に来るわけです。新製品が出来たとか、売り上げがどうとか、そういう応対をしておりました。それから後は、いろんなお客様、代理店の方も来られますし、あるいは文化人の方も。例えばイギリスのアーノルド・トインビーさんという有名な歴史学者の方が奥さんと一緒に来られたり、石原慎太郎さんとかも来られました。女優さんで言えば高峰三枝子さんとか三田佳子さんとかコマーシャルで関係のある方が多かったようにと思いますけど、いろんな人が来られまして、その応対をしたり、そういうことをやっておりました。

私が初めて直接、幸之助さんに会ったのは、12月の2日か3日ぐらいだったと思うんですけど、入って暫くしてからでした。ちょうど幸之助さんが来ていまして、紹介するからということで上司に連れられて、部屋に入ったわけです。所長室と言っておりましたけれど、サロンとも言って、お客様の応対もそこでやっておったんですね。そこへ入って行きますと、机に向かって何か物書きをしていたように思います。上司が「今度入って来た谷口君を紹介します」と声をかけると、くるっとこっちを向いてくれました。

その時、背広は紺の背広、それから紺系のネクタイをピシッと締めて、頭の毛は七三にきっちりと分け、そして当時は黒縁の眼鏡をかけていました。たいへん精悍な感じがしましたね。その眼鏡の奥に鋭く光る目といいますか、人の心を射抜くような目があったんです。

「谷口君、君はいったい何を勉強してきたんや」と問われて、「経済学をやってきました」と言いましたら、「経済か。経済とはいったい何や、経済とは君らはどう習ってんのや。わしは学校へ行ってへんから教えてくれや。しかしあんまり難しいことを言われてもわからんので、一言で言ってくれや。一言で言えば経済とは何や」

そう問われてどう答えたか全く覚えていません。何か喋ったように思うんですけど。一言でいうのはたいへん難しいですね。本当に分かっていないと一言で言えないんじゃないかとつくづく思いました。それが最初でした。それから勉強会に出たり、あるいは秘書的な仕事をしたり、あるいは出版の仕事になったりと、そんなことをやってきたわけでございます。

今日は「サービス精神、サービス哲学」ということでございますので、一つだけ一分ほどのビデオですが見ていただきます。これは88歳の時のビデオです。一般の人向けの最後の講演になったと思います。世界社長会というのが、確かパリに本部があったと思うんですけど、それが日本でやられた世界大会、いろんな世界の国から経営者の方々が来られて、そこで基調講演をやったんですね。でも、だんだん声も出なくなっていました。しかしこの時は案外体調がよかって、「人間とは何か」という話をしたんですけど、その後の質疑応答ですね。その時にビジネスマンの条件はいったい何かというようなことを話してますけれども、それをちょっと見ていただきたいと思います。88歳です。

<映像>

質問:ビジネスマンの最も重要な責務は何でしょうか。
松下:今の質問はね、ビジネスマンとしてのね、大事な責務ね、責任があると。何でも責任がありますけど。ビジネスマンとしてね、一番大事な責任は何かと、そういう質問ですわ。それでね、僕もビジネスマンやな。 まあ簡単に言うとね、みんなに愛されることやね。ビジネスマンはね、みんなに愛されなあかんですよ。あの人がやったはるんやったら、物を買うてあげようと。こうならなあかんですよ。そのためにね、奉仕の精神が一番大事ですわ。奉仕の精神が無かったら、あそこで買うたげようという気が起こらない。そうですから、ビジネスマンの一番大事な務めは、愛されることであると。愛されるような仕事をすることであると。それが出来ない人はビジネスマンに適しない。必ず失敗すると。



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