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経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「松下幸之助のサービス哲学」


あるいはパビリオンが出来上がって開館してから、たくさん並ぶわけですね。どこのパビリオンもそうでしたけれども、松下館もたくさん並んだわけです。副館長が中でモニターを見ながら外の並び具合をずっと見ていた。そうしたら幸之助さんが秘書の人と並んでいるのが映った。普通なら横のドアから、特別に入ってもらわないといけないのに、びっくりして行って、「いったいどうされたのですか」と聞いた。そうしたら「入るまでにどのくらい時間がかかるか調べてるんや。ほっといてくれ」ということ。後で指示されたのは、もうちょっと誘導の仕方を考えろということと、ちょうど春に開館しましたので、これからますます暑くなってくると。暑い炎天下に長いこと並ばすのはたいへんだと。何か日よけを作れと。

吉田五十八(よしだいそや)さんという有名な建築家が設計した天平時代さながらの建物で、日本的なパビリオンでしたけど、それに合うような日よけを作らないかんと。お茶の立礼(りゅうれい)で使う日傘ですね、あれの大きいやつを立てて、そこに並んでもらうことにしたのと、もう一つは日よけ帽を配ってしのぎました。その日よけ帽を作ったときには、せっかくなのでそこに「ナショナル」と入れたわけですね。そしたら、松下館に入った人はそれを被って万博の会場をずっと歩くわけですから「松下さんは宣伝上手だ」と、そういうことを言われたこともあるそうです。けれども、そうではなくて、やはりお客様にどうしたら一番喜んでもらえるのかということを、まず優先させて考えたというところから出てきているわけですね。そういういろんなエピソードが万博の中でもありました。

それからもう一つは、謙虚さですね。これは商売人として愛される大きな条件だろうと思います。このへんについては、やはりたいへん注意しておったように思います。しかし、自分はそう振舞っていても、社員はそうはできない。だんだんとナショナルの名が高まっていくと、あるいは取引先も多くなってくると、どうしても傲慢さが出てくる。謙虚ではない姿が生まれてきておったんだろうと思います。このことについては、どうしたら従業員の皆に謙虚さを維持してもらえるのか、そういうことにたいへん苦心したと思います。発言録を見ますと、何回もそう言っていますから。

昭和10年に社内規を作りまして、そのうちの1条に、15条なんですが、「松下電器が将来いかに大をなすとも、常に一商人たるの観念を忘れず、従業員またその店員たることを自覚して、質実謙譲を旨として業務に処すること」と訴えています。一商人であることの観念を忘れたらいけませんよ、ということなんですね。商人でないといけない。

我々も「商人て何ですか」と聞いたことがあるんです。幸之助さんの答えは三つでした。これはレジュメにも書かせていただきましたが、一つ目は商売の意義がわかる人、何のためにこれをやっているのかわかる人。それから二つ目は、相手の心が読める人。相手が今何を考えているのか、それがわかる人。それから三番目に、相手より頭が下がる人。これが謙虚さだということになります。言い方がたいへん面白いと思いますね。相手より頭が下がらないといけない、ということなんですね。これは一番苦心し、自分も努力していたことではないかと思います。

いろいろな方と対談していますけれども、高峰三枝子さんですね、歌う女優さんの第一号と言われているあの方もよく真々庵に来られたんですけど、対談をしましてね。それは文章にも何もならなかったんですけど、ちょっと雑談の中で、幸之助さんが言ってるんですが「自分は頭を下げ下げやってきた。いろんな人がいて、接待で、自分はあまりお酒が飲めんのに、しかし注いでいく。そうすると、注いでくれる。自分は飲めないから、もう一人部下を横につけて、回しながらね。そうすると、わしの酒は飲めんのかとかそういうふうに言ってくる人がいる。それは頭を下げ下げやってきたんだ。しかし誇りは失わなかったなあ」と、そういうことを言ってますけどね。ですから何のためにやっているかということだけは忘れなかった。だからそういうこと全て喜びに変わるといいますかね、そういうことだったんだろうなあと思いますね。

とにかく謙虚に頭を下げ下げ、このへんが幸之助さんという人は、人使いに対してもそういう面があったのかなと思います。

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