松下資料館 トップページ>資料館のご案内>経営研究活動>活動内容

経営研究活動

松下幸之助生誕120年・松下資料館創設20周年 記念講演会 「感動が生まれるおもてなしの心」

「松下幸之助のサービス哲学」


私の好きな言葉で「人使いの基本は、従いつつ導く」ということ。従いつつ導く、たいへん難しい言葉です。何に従いつつかと言いますと、相手の自主性に従いつつ自分の思う方へ引っ張っていくということ。だから相手は喜んで行動する。それでいつの間にか自分の方向へ連れていくという、そういうことなのでしょうね。これは子育てにも通用するかもわかりませんね。従いつつ導く。ですから「君、どう思う?」と言うのが口癖でした。「君、どう思う?」「私はこう思う」「こうしようと思うんだけど、君どう思う?」そうしますと、「いや、もうちょっとこうした方がいいんじゃないですか」というのが出てくる。そうすると主体が、もう向こうに移っているんですね。ですから自分の気持ちで動ける。そういうやり方が一つの特徴だったかなと思います。これも松下流リーダーシップなのだろうと思います。俺について来いと引っ張っていくというタイプではなくて、ここへ行こうと思うんだけど、みんなそれぞれ行ってくれと、言わばそういう感じなのでしょうね。そのへんがたいへん面白い特徴だなと。みんなそれぞれに自主的に動いてもらうというのがあったんだろうなと思います。

それから3ページ目の語録ですけれども「報酬はサービスに応じてついてくる」ということ。「ぼくの商売の体験からいえば、報酬というものは、サービスに応じてついてくるものだと思うのです。大きなサービスをすれば、大きな報酬が放っておいてもついてくる。世の中はありがたいものでしてね、基本的にはサービスのしっぱなしということはないと思うのです。サービスをすれば必ずそのサービス以上になって返ってくる」。これも一つの考え方であると思うのですね。ですから、とにかく奉仕すればやはり何かが返ってくる、こういうのがあった。そういう信念。ですから製品も価格も他のサービスも含めまして、いかに奉仕出来るか、そのことによって報酬というのが決まってくる。松下電器(パナソニック)の利益というのは、そういうことなんですね。

ですから、まず奉仕する。利益というものは、奉仕のバロメータだと。赤字というのはそれだけ世の中に奉仕できていない、赤字になるということはそういうことや、そういう前提ですね。だから、物が悪いか、価格が悪いか、あるいは他のサービスが出来てないか。それが全部出来ていたら必ず利益というものはあがってくる。そう考えてやろうということでもあるんですね。礼儀、道徳、あるいは思いやりというのもサービスで、実際に実利に結びつくものですよということなんです。

ある時、若い社員とこんな会話を交わしたことがあります。「君ら、お父さんやお母さんの肩、揉んでるか」と。肩揉みの話なんです。「いやいや、揉んでません」という返事だったんです。「それじゃ君ら出世できひんで」と。そして言ったことは、どういうことかと言いますと「そういうことがすぐ出てこないといかん。例えば君が40代の課長と残業をしている。課長は疲れて肩を凝らしている。その時に君は、『お疲れですね。肩を揉みましょうか』と言えるかどうか。そう言えば課長は、『ちょっと揉んでくれ』と言うかもしれない。けれどほとんどが、『いや、君も忙しいやろうから気にしないでくれ』あるいは『君もひょっとしてデートがあるんと違うか。先に帰ってくれよ、心配しんと帰ってくれよ』と言うに違いない。しかしそう言われることによって課長はどれほど心癒されるかわからない。あるいは二人の気持ちがどれだけ通じ合うかわからない。そのことによって仕事がたいへんスムーズに動き出す。それは生産性に結びつくんだ。そのことによって仕事がはかどることになる。上手くコミュニケーションがはかられていくんだ」そういう話をしたことがございます。

そういうように、思いやりとか礼儀とか、あるいは道徳が、実際に生産性に結びつくのですよ。経済に結びついているのです。これは「道徳が実利に結びつく」と論文も書いているのです。『PHP』で発表しましてね。それを冊子にして、これを教育界に配ろうということで、中学、高校の校長先生に配ったことがございます。道徳というのは、単なる道徳ではないのですよ。これは物を生み出す面があるんですよ、そういうことも頭に入れとかないといけませんよということです。

« 講演会へ戻る