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経営研究活動

「グローバル人材育成 ~世界とロジックで対抗する

「グローバル人材育成 ~世界とロジックで対抗する

立命館大学 特別招聘教授
薮中 三十二氏

昔、ジュネーブのWTOで会合があった時、自分に訓練を課した。それは日本の発言を3番目にしゃべることであった。 1,2番目はだいたい小国が発言するのだが、私にとって大事だったのは、アメリカとかEUの前に発言することであった。
その時に心掛けたのはプロポーザル(提案)であった。
会議の際、東京から届く公電は各省で相談合議した内容であるので、どうでもいいような内容になっている。 これを何とか自分の枠内で料理してポジティブに言わないといけない。
弁解ばかりではダメであって、なぜこうなんだ、これはこうで我々はこうしたいんだという。そのことが大事だと思った。 交渉している相手と理詰めで交渉しても、こちらが言ったことを、相手は国に帰って説明しなければいけない。
その時にちゃんと"何でこうなんだということが、日本もこういうふうにやるからこうなんだ"と説明できなければいけない。
そういう意味でもロジック力は共通語だと思うし、相手の立場もお互いに考え交渉をやっていた。
外交というのは50対50とよくいわれるが、やる以上は60対40を私は目指してきた。
60はとるぞという心意気ではあったのだが、最後とれたかどうかはわからない。
でも、相手の立場も考えてどこで手をうつか。
相手が悪いと批判したり、何で出来ないのかと説明するのは簡単だが、そうではなしに相手との信頼関係を作りながらこっちも譲るところは譲るといったその見極め方が大事だと思う。

三つの場面を紹介したい。
小泉首相の時にG8シェルパというのをやった。首脳が夏に集まってサミットをやる前に各国1名づつ出席して会合を開くが、大変だった。何が大変だったかというとアジア人は私一人。
共通の価値観外交があって、例えば自由とか民主主義とかあるわけだが、やはり欧米の人達とアジア人一人というのは結構大変である。
お互いの背景の違いとか、キリスト教とかあるが、それ以上に対等にやっていくことは大変で、いつも自分にも鞭を打ってやっていた。
相手に説明せねばならない。私は一人ひとり相手の国に先に行って仲良くなるとか各個撃破でやっていた。
北朝鮮の6か国協議参加国は半分くらいアジアの国で、しかも日本は北朝鮮の核問題についてはよく理解していた。
また、中国はまだ十数年前であれば日本に頼ってきたものだが。
ASEANの国々とはやり易くて、すぐ仲良くなる。最大の問題はあまりに当然視することである。
あまり問題がないのでASEANの会議に行かない。総理が毎年変わっていたときは一度も行けなかった。
中国が一生懸命ASEANに行くという時に、日本から全然来ないというと、これはやはり良くない。
相手とのコミュニケーションは大事であり、常に意識しなくてはならないのは"当然視する"ことの間違いである。

トランプ政権の誕生 今現在世界で起きていることは戦後70年続いた世界システムの瓦解であり、オープンで寛容な国際協調の世界の終焉といえるのではないか。
自国中心の弱肉強食、力の支配する世界になっているのではないか。
もう自由貿易はだめだという自由貿易体制の崩壊危機ではないか。
トランプ政権の特徴は選挙戦のスローガンをそのまま実行している。
反自由貿易であり、TPPの終焉であり、NAFTAの見直しである。
又、その政権は大統領とそのインナー主体で、4,5人のとりまきが中心で誰が本当にやっているのかわからない。
今回の選挙を通じて分かったことはアメリカは分断されたアメリカであると。ユナイテッド ステイツ オブ アメリカではないと。
アメリカは21世紀になってからも経済発展を続けている。それは西海岸でのIT産業であり、東海岸での金融・サービス産業である。
その間にとり残されたのがラストベルトとかいわれている中西部あるいは南部ということになる。
第1の問題は中西部にどんどん産業を興して、アメリカ人を雇用しようといっても、少しはうまくいっても、大きな意味で経済は全然うまくいかないことはわかっている。
第2の問題は大統領がそれを突っ走っていることだ。大統領の力は大変強く、4年間保護主義的なことをやると影響は大きくでる。
結局、置き去られた人のための政権である。
只、7か国からの入国禁止という大統領令に対する裁判所の対応を見ると、チェック機能、三権分立はアメリカの中でかなり機能していると思う。
マスコミと行政府の対決や議会と行政府の問題はあるけれども、ある程度バランサーとしての力があるのは裁判所であることを示した。その辺は健全なのかなと思う。
日本の中でトランプ政権の姿勢に対し「我が国も大変だ」といったことになっている。
それはトランプ大統領が対日貿易赤字について問題にしているとか、トヨタがツイートで言われているといったことである。
日本人の真面目さというか、日本は生真面目すぎて言われたことにどう反応するかというのが中心になる。

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