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経営研究活動

「新・観光立国として日本はどう変わるべきか」

「新・観光立国として日本はどう変わるべきか」

株式会社小西美術工藝社
代表取締役社長 デービッド・アトキンソン氏

 これで見ればわかりますけれども、日本は輸出大国だということを言う人は結構いっぱいいます。確かに総額を見れば世界4位なんですけれども、ポイントになってくるのはドイツ。ドイツは日本の倍以上輸出してます。ドイツ人の人口は日本の3分の2しかないです。ということは、この倍以上になっている、実は3倍近くになっています、一人当たりでみれば。ですから日本の人口が多いから、結局総額ということでみると人数の関係で大きくなりますけれども、一人当たりで計算すると、実は思われるほど実績があるわけではない。一人当たりで計算すると日本の輸出総額は世界44位で、それで経済に対する比率でみると世界113位になっていますんで、総額は大きいんですけれども、人口に比べる実際の実績を考えると、輸出小国になります。なぜそうなっているか理由の一つは、実は観光戦略がまだ十分にできていないということが、これと大きく関係をしています。今ですと、日本の輸出の中で3番目に大きいのが観光です。外貨を使ってくれるということは輸出としてカウントされますので、ここが少ないということは観光がまだ少ないということを意味しているものの一つにもなります。
 今までの話では観光戦略はそういう意味で、これを説明した方がいいですかね。実は今、流行りの生産性の話。一人当たりの所得にもなりますので、なぜ日本人の所得が低いのかという理由の一つは、実は輸出が少ないからだということになります。輸出が非常に多い国と、その国の生産性所得を比較してみると、88%の相関関係にあります。それが世界の133ヶ国の分析でありまして、途上国までいっても同じ関係になります。そうすると先程申し上げましたように日本は世界113位の輸出が非常に少ない国ですから、その分だけ所得がマイナスになっていくということなので、実際には観光戦略を増やすことによって、所得水準を引き上げることもねらいの一つでもあります。

世界の「観光産業」の現状
・全世界のGDPの10%を占める
・全世界の雇用の1/10を占める
・観光輸出の総計は1.4兆ドル世界総輸出の7%を占める
・「世界観光客数」2017年には13.2億人
人口減少と生産性向上

 今までの話というのは、あくまでも日本人の人口減少高齢化対策の、ある意味でご都合主義にすぎません。それに比べて観光産業は世界にとってどのくらい大きいものなのかということを考える必要があります。みると、全世界のGDPの一割を占めています。昔は南の島がやるものじゃないのということをですね、私は4年前に、忘れられないんですけれども、経団連の観光戦略のところに行って、いきなりに観光部会をやりまして、会長さんに何を言われたかというとですね、「日本は外国人におもねるまで技術力が下がったわけではない」ということを言われまして。その考え方はあるんだろうなと思いましたけれども、やっぱり基本的には観光産業というのは、あんまり素晴らしい産業ではないという考え方、5年前にはありました。ただそれは90年以前の話であって、90年以降は世界の観光産業というのは、ものすごい勢いで発展しています。今は一番下にありますように、この地球を旅した2017年の実績は13億2649万1000人がこの地球を旅をしています。74億人ぐらいですので、相当の割合になります。1990年のときは、これは4億でした。ですからすでに3倍以上増えています。90年になってから爆発的に増えていますんで、かなり大きい発展をしてきていまして、ご覧のように2017年の数字をみると、7%の前年対比になっています。国連が出している予想では2030年になりますと、18億人まで増えるというふうに言われていますけれども、ご覧の通り2017年ですでに13億になっていますんで、数年前に出された18億人の予想というのも3.3%の増加だったんですけれども、すでに7%になってまして、3.3%を下回ったことは一回もありませんので、おそらく20億近くまで増えるという予想がもうそろそろ出るのかなというふうに私が思っています。そういうふうにみると、世界にとって、ここにありますように世界総輸出の7%を占める13億2000万人までいきまして、ここには書いていないんですけども、世界第三基幹産業にはなっています。一番は化学。二番は石油を中心とする燃料ですね。三番目は観光。日本に強みのある輸送機、自動車とかはですね、4位なんです。あまり皆さんは実感がないかもしれませんけれども、燃料の部分は日本は無いので、結局日本でもすでに第三基幹産業なんです。今のままでいきますと、だいたい2020年から2025年の間に、実は自動車の輸出量を上回りまして、第二基幹産業になっていく勢いで、今伸びていますので、大きな期待ができる業界でもあります。
5年前の時には、これ一番重要なところなんですけども、人数は日本政府の目標見ると、人数はあくまでも収入目標を実現するための人数目標に過ぎないんです。そういう意味では日本は割と先行しているといいますか、他の国よりは目標の設定は優れていると私は思います。多くの国は未だにこの人数をどうするのかという事を言っていますが、先程申しましたように、特に日本の場合は、人口減少を抱えている国というのはいくつかあるんですが、日本ほど人口減少する国はこの地球上どこへ行っても無い。一番厳しいところが日本の次だったら一割減なんですけど、日本はもう四割減になってますのでもう全然規模が違います。そうすると日本にとっては、たくさんの人が来るというよりはたくさんお金を落としてもらう人が来ると、そっちの方が重要な問題になってますので、それが今の政府の最大の狙いはそこにあります。

観光収入、祝 世界10位
観光収入、祝 世界10位

 5年前の時は、実は日本は観光収入が世界27位のランキングだったんですけれど、去年、一昨年ですね2017年、収入ランキングでは念願のトップテン入りを果たしました。10位になっています。今のところはマカオの90%台までいってますので、おそらく今年はマカオを上回りまして、9位ぐらいまで上がっていきます。
 ここが一番ポイントなんですけども、昔は5年前とか4年前とかいろんな人は観光客たくさん来てもらって、日本文化を海外に広めるとか、世界平和に貢献するとか、そういうような話が多かったんですけれども、人口減少高齢化問題を抱えてる以上は、そんな綺麗事言ってる意味があんまり無くて、これはもう最初から最後までどのくらいの収入を得ることが出来るのかというのが最大のポイントになっています。これは言葉としてはあんまり良くないかもしれませんけど、そういう意味では私は外国人でありながらも、自分としては外国人観光客は最初から最後まで楽しんでもらう代わりに、どこまでお金を落としてもらえるのかということが最大の目的になっていますので、今日電車に乗ってきて見ると、私の目には外国人観光客というのはただ単に歩くお札にしか見えないんです。
 せっかくやはり円をいっぱい買ってもらった以上は、持ってるものは全て落としてもらって、軽くなって海外に戻ってもらうというのは最大の狙いになっていますので、そういう意味では観光というのはどこまで稼ぐことが出来るのかということは一番のポイントになっていますので、だからこそ政府が進めている2020年4千万人の目標を掲げてますけれども、同時に8兆円の収入目標も設定しています。そこまでは背景的な話なんですけれども、今は私はたくさんの政府の委員会に参加してまして、昔はこういうふうにした方がいいという事は散々言ってきたのですが、難しいのは最近はいろんな委員会の内部に入ってしまった以上は、こういうふうにした方がいいという無責任なことは言えなくなってしまったという難しい立場になってしまったのですね。どこまでこうするべきかというのと、どこまで今実行しようとしているのかということが、混ざっているところがありまして、そういうとこで考えながらこれからご説明していきたいと思います。
 今、たくさんの委員会と私が申し上げている一番大きいポイントなんですけれども、京都もまったくその通りだと思いますが、今一番の課題は実はここのポイントにあります。要するに国の方は4千万人目標を設定をしたんですけれども、国の方は4千万人になるのか3千800万人になるのか5千万人になるのかですね、かなりの部分で国がある意味の管理、コントロールをすることが出来ます。
 ビザの条件どうするのかとか、今特別顧問勤めている日本政府観光局は、どういう国に対してどういう発信をしてどういう誘致をしようとするかによって、どの国からどういう人を呼ぶことが出来て、だいたい何人ぐらいにすることができるのかというのは、一定のコントロールは出来ます。当然ながら、例えば日本は島国ですから船と飛行機でしか来れないわけですので、そうするともっと人が来て欲しいと思えば、政府の方から働きかけて全日空もしくはJAL、もしくは外資系の航空会社に便数を増やしてもらえませんかとかですね、そういう話になってきます。当然ながら事業者なので、そういうところに便数を増やしてもらうという事で、人が乗ってこないと損するだけですので、そうすると一生懸命誘致に努めてもらうことにもなりますので、ある程度はこの4千万人、それで2030年の6千万人というのは、国である程度作れるといいますか、そういうことは割とそういう数字を動かすことは出来ます。
 出来ないのはですね、8兆円の目標と2030年になりますと6千万人なんですけれども15兆円の収入目標を設定しています。ご存知の通り今はだいたい16万円くらいのひとりあたりの消費額になりますので、2020年の4千万人8兆円ということはひとり20万円なんです。2030年になると6千万人の15兆円ですので25万円になります。先程の生産性の話に多少触れましたように、一つの目標としては生産性を上げなきゃいけないので所得も上げていってもらいたいという事も、もうひとつの狙いとしてありますので、それを考えるとしっかりと2020年は今の16万円を20万にしてもらって、2030年になると25万円にしてもらいたいと。

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