松下資料館 トップページ>資料館のご案内>経営研究活動>活動内容

経営研究活動

「新・観光立国として日本はどう変わるべきか」

「新・観光立国として日本はどう変わるべきか」

株式会社小西美術工藝社
代表取締役社長 デービッド・アトキンソン氏

 そうすると、これはチェックリストなんですけども、観光客が来るときには24時間います。9時に寝なさいということを言われても、観光客は暇な人なんです。予定の無い人。夜の9時に寝なさいと言うのはですね、それはビジネスマンの話であって、子供の話なので、やはりアクティビティがあるかどうか、ナイトタイムエコノミーと言いますけれども、夜はちゃんと出来るか出来ないのか。これはもう一つ京都に人が来るのに奈良に人が泊まらない理由の一つ、そこにあるんですよね。奈良はもう6時ぐらいになると誰もいない。解説案内板があるかどうか。今、観光庁の予算の中で、延暦寺の多言語対応がされています。その監修をやってますけれども、解説案内板をきちんとやると、本当に面白いです。ある修行をするお堂があるんですけれども、延暦寺の関係者、今日いらしてますか。延暦寺は素晴らしいとこなんですけれども、小西美術の得意先の一つでもあります。あれ以上退屈なお寺は無いなといつも思います。ただ私としては、自分の思いの一つなんですけれども、小西美術の社長として、得意先ですので、自分がお参りに行くときに丁寧に丁寧にお坊さんの皆さんに対応していただきますので、そうすると面白くてしょうがないです。私としては多言語対応の事業はどういうものかというと、私としては、私が行くときに対応してもらう内容を看板に書いてくださいよということなんです。皆さんに、そういうふうに本物の良さを伝えてもらいたいというのが多言語対応なんです。
 これまた不思議なんですけど、カフェ、食事というのは、人間が来ていますので、生きている以上は飲物、食べ物いるものなので、食べるな、座るな、飲むなと言われるとですね、観光客呼びながら「人間は駄目だ」ということ言ってるようなものなので、そういうのはご都合主義で変えるべきだと思います。
 座る場所というのは、京都もそうなんですけど、座る場所が用意されてないですよね。座る場所がなぜないんですかという事を聞くと、「アトキンソンさんね、座る場所を提供するとね、座るんですよ」ということ。だから1分でも早く帰りなさいみたいな考え方が非常に強くて、楽しんでもらう、体験してもらうという考え方あんまりないんですよね。昔であれば、人口がすごく増えてる時代で行列が出来てますから、とにかく早くいなくなって欲しいというのはあったかもしれません。ただそれは古い話で、今はひとりひとりに、外国人いっぱい来てもらうからといって、かつての日本人の観光ブームのように、あれぐらいの人間の数になるかというとなりません。そうすると単価を取ってもらわないとまわらないので、単価をとってもらうということは満足してもらわなきゃいけない。滞在してもらわないといけません。立ち食い蕎麦と会席の究極の違いは何かというと、10分と2時間です。ですからなにをするにしても、後ほどご説明しますが、なぜ自然の方がお金が落ちるのかというと、滞在時間が長いからなんです。
 ビーチで一日ただでゴロンとなってるだけなんですけど、長くいるとお金使うんです。京都に来て宿泊してもらえば、何倍もお金を使ってもらえるんです。寝てるだけなんです。だけどその8時間の価値というのは、ものすごい高い価値なんです。ですから滞在をさせる、してもらうということがものすごい大事で、それには満足があって、それこそ宿泊施設の設備投資がそこにあるということがポイントの一つだと思います。
 時間がなくなってますので、これはサラッといきますけども、ここで二つ上げます。総合テストというのは、先ほど申し上げた二条城のパンフレットにありました。外国人のためになるものなのかどうなのかということで、与える情報考える必要あります。先日新宿御苑のものやってたのですけども、京都の迎賓館やってもいいんですけども、京都迎賓館のつい最近までのパンフレットの中で、当時の知事と当時の市長が国に訴えていて、それで作ることになりました。入札でした。大林組が落札をしました。日建設計がそれを設計したと。地上一階地下二階。鉄筋コンクリートうんぬんと書いてあります。外国人からすると、総事業費がいくらで、大林組が落札したんだろうが、誰が落札したんだろうがどうでもいいという話がありました。
 京都二条城もこれは傑作でしたけれども、京都二条城のパンフレットの裏の面は、京都二条城のアクセスが書いてありました。京都二条城に行かないともらえないものなので、アクセスは既にしてしまったということなので、あなたどうやってきたのかという事を説明してるだけなんです。他のところには置いてませんでしたので。そういうのは総合テストで、この情報が大事なのかどうなのかということを考える必要があります。
 こういうのもあります。翻訳をやめてください。どんなに優秀な翻訳者であっても、今回の多言語対応やっていても、和文というのはあくまでも日本人の頭の構造のために出来てるものなので、どんなにうまい翻訳者であってもそこに限るということなので、将軍だといわれても「将軍」わかりません。律令制度が律令システムになったからといって、わかりません。そういうのは、今国の方では翻訳はしません。バイトを送って、外国人のバイトを送って、ちゃんと自分の言葉で全部書き起こしていきます。
 最近、京都はこれは良くなってきてますけれど、ホテルの問題。外国人からすると、全員がお金持ちというわけではないんですけれども、日本全国の宿泊施設の単価というのは合わないです。あくまでも長いデフレとビジネスマンと人口減少で、過当競争の結果で非常に安くなってると思いますけど、設備投資も十分出来て無い所が非常に多くて、やっぱり高くすることも出来ないところも多々あります。
 観光戦略を全面的に世界中を見てみますと、5つ星ホテルと観光収入の相関関係、91.1%。決定的です。これは象徴です。5つ星ホテルが多いということは、4つもそれよりも多い。それより3つが多い、それより2つが多いということで、ピラミッドがちゃんとできてるということで、上からそういうところが存在しているということが特徴です。では日本はどうなっているかと言うと、5つ星ホテル、これは認定では少ないです。これは民間調べなんですけれども、見ると、アメリカ755軒。イタリアは176軒。フランスは125軒。バリ島一個の島だけで42軒あります。それに比べると日本全国はどうなっている、28軒しかありません。東京18軒、京都4軒、それで残り全部大阪です。せっかく国の方で富裕層誘致、特に京都は富裕層を呼びやすいとこなんですけれども、呼びやすいのにそういう層の人達を宿泊してもらうための施設ができているかというと、最近出来てきています、だけどもそこまで出来ているわけではない。普通に考えれば、その何倍も5つ星も4つ星も3つ星があってもおかしくないんですけども、やっぱり頑張って、観光戦略からすると不必要に安いところが多々あります。私としてはそれはもったいないなと思いますけれども、高くとれるのに高くとるようにすればいいんじゃないかと思うんですけれども、安く提供することによって外国人喜んでるかと言うと、喜んでません。
 最後になりますけれども、ポイントは、ここにあります。フランス8445万人が来てますけれども、単価は世界108位です。世界6位のところがアメリカで、日本の倍以上の単価をとっています。これはイギリス人の偏見なんですけれども、アメリカは歴史も文化も何もない国なのに、何で6位なのかというと、やはりナイトタイムだとかショッピングだとか食事の多様性だとか、あと何よりもアメリカは上手に上手に国立公園を最大限まで活かしていて、ビーチリゾートもフロリダを中心にカリフォルニアもそうなんですけれども、ライフスタイル提供をすることによって世界6位の実績を実現しています。それに比べて日本はどうなのかと言うと、46位です。ということで、やはり両方が出来る日本ですから、今、国の方では国立公園満喫プロジェクト、文化財の多言語対応、今度は文化庁のリビングヒストリー事業、それで観光庁の方で観光資源のインキュベーター事業とか、散々国の補助金を出していて、設備投資をすることを徹底的に応援しています。残念ながら私としては、市長も知事に対しても、数字を見ると京都は日本一手を挙げない地域なんです。設備投資をすればいいのに、設備投資をするための補助金が何百億も用意したにもかかわらず手を挙げないんですよ。いうことなので、多分場合によっては気付いていない。場合によっては別にそういうことをやらなくてもいいんじゃないのっていうことで、やってもやらなくても人は来るんだという、まあ胡坐をかいている部分はあるかもしれません。ただ問題の一つは、今来ている外国人観光客というのは初めての人が多いんです。当然ながら1000万人から3100万人まで増えていますんで、ほとんど初めての人。初めての人は必ず最初は京都に来ます。2回目のときは日本に来ないという選択肢も当然あるんですけれども、2回目来たとしても、京都は一回行ったんだから大したことなかった、見栄えよかったんだけれども、設備はちゃんとインフラ整備されていないと、二度と行かないということです。今、一番恵まれている時期ということを危惧する必要は、私はあると思います。そういう意味では、大原に人行ってもらいたいとか、伏見稲荷以外のところに行ってもらいたいということを言うのであれば、それは設備投資をすることによって、思いますけれども、それをやらなければ。一回伏見稲荷行って、一回金閣寺行って、一回二条城行って、二度と京都自体には来ないということは十分考えられます。私としては、京都に家を持っている人間の一人としては、やはり今から国全体で設備投資が非常に大事なことになるだけではなくて、今までは初めてということで京都が非常に恩恵が大きかったんですけれども、これからどんどんどんどん厳しくなっていくことは予想されますので、恵まれた時期に甘えることなく早めに徹底的に観光公害等との問題を解決していくタイミングだと私は思います。ご清聴ありがとうございました。

≪ 講演会へ戻る