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館長からのメッセージ

観光立国であるためには
2020年11月

 日本は天然資源が乏しいために、工業を盛んにして工業製品を輸出することで国を発展させてきました。しかし、中国が世界の工場とまで言われるようになった現在、工業製品の輸出大国としての日本の地位は揺らぎ始めつつあります。
 では、今後の日本はどういった道を歩まねばならないのでしょうか。
 1952年(昭和27年)という戦後の復興期に、松下幸之助は日本の景観美を生かした“観光立国”を提唱しています。

「日本の富のいちばん大きなものは景観美だと思う。これは天与のものであって、われわれがつくろうとしてもつくれない。この景観美を世界の人に観賞してもらおうというわけである。それには観賞する施設をつくらなければならない。それをつくってやれば、景観の美は永遠に尽きない。交通も便利になり、飛行機で飛べばすぐに日本に来られるから、サービスさえよくすればたくさんの人が外国から訪ねてきて、いわゆる“観光立国”ができるであろう」 (松下資料館 見学ガイド「松下幸之助 国家社会への提言」より)

 ここ数年、日本の観光政策によりインバウンド客が飛躍的に増えました。日本の代表的な観光地の一つである京都では、日本人観光客よりも外国人観光客の方が圧倒的に多いという状況が生まれました。しかし、今年に入って世界中に蔓延した新型コロナ禍によって、瞬く間に外国人観光客の姿を見なくなってしまいました。最近は、『Go To トラベル』等の国内経済底上げ策によって、日本人観光客は増えているようですが、世界中のコロナ禍が収まらない限り、日本にとってインバウンドによる外貨獲得への道はなかなか厳しい状況にあります。
 以前、旅行会社のエイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長とお会いした時に、「世界が平和でなければ観光産業は成り立たない。だから観光産業は平和産業である」とおっしゃっていました。
 世界を見渡してみると、戦争や紛争のある国や地域が後を絶ちません。また、核の脅威は大きくなる一方です。観光立国を標ぼうする日本にとって、世界の不穏な動きを見逃す訳にはいきません。
 これからの日本経済の大きな柱とならなければならない観光産業が、世界のパンデミックや紛争によって大きな打撃を今後も受けるようでは困ります。インバウンド客を増やすために、今までのような、観光地の整備事業や宿泊施設の増設だけを考えた施策では不十分と言えます。これからは、観光立国として発展するために、パンデミック対応や世界平和について、インバウンドの視点も踏まえた提言活動や国際協調がより一層求められるのではないかと思います。

第二回観光庁長官表彰の盾2010年10月1日 松下幸之助に贈られた
第二回観光庁長官表彰の盾

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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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