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館長からのメッセージ

良識ある人材づくり
2021年12月

 昭和28(1953)年1月から昭和36(1961)年1月までの8年間、松下幸之助は松下電器社員の給料袋の中に従業員へのメッセージを載せた「給与リーフレット」を入れていました。松下幸之助の思いを従業員に伝える社内コミュニケーションとしてのツールでした。昭和28年10月1日の「給与リーフレット」には“捉(とら)われない心”というテーマで次のようなことが書かれています。

 「みなさんお元気ですか。暑い夏もすぎ去って、肌がサラリとする気持のよい秋がやってきました。一年の中で一番よい季節ですね。澄み切った大気。カラリと晴れ上った青空。本当に心のすみずみまで洗われたように感じます。こんなとき、私たちの気持も本当に落着いたものになると思います。
 しかしお互い人間は、こんなカラリとした気持を、いつも変わらず持ちつづけることはなかなか困難で、ともすれば一つの立場に執(しゅう)し、一つの見方に捉われます。こんな捉われた心でものごとを判断しますと、丁度色めがねをかけて物を見ているように、本当に正しいことが分からなくなってしまいます。これは自らの不幸だけではなく、場合によっては他人をも不仕合わせにいたします。ですからお互いに、よほど心を引きしめて、正しいものの見方ができるよう心がけねばなりませんね。
 もっともこれはなかなかできないことで、時に誤まり、時にゆきすぎます。これが人間の一つの姿でもありましょう。ですからこんなときは、お互いに話合い、お互いに教え合わなければならないと思います。つまり友愛の心をもって互いにいたわり合い、助け合ってゆくのですね。
 憎しみは破壊に導き、友愛は建設を生み出します。お互いに憎しみ合うことほど、人間として惨(みじ)めなことはありません。これもやはり捉われた心から生まれてくると思うのです。しかしまたお互いに助け合って明るい生活を生み出してゆく姿ほど美しいものはありません。
 みなさん気持のよい秋です。カラリと晴れ上った青空のように、捉われない心で、お互いに与えられた生産人としての使命を立派に果たしてゆきましょう。」

 松下幸之助は、従業員が「給与リーフレット」を読むことによって、良識を養い高めてもらおうとしたのではないかと思います。仕事をしていると、規則やルール、マニュアルでは律しきれないことがたくさんあります。そういう時に、従業員みずからの良識で健全な判断ができるようにすることが大事だと考えたのではないでしょうか。
 良識ある従業員が育っている会社は、互いの立場を尊重できるようになり、仕事も能率的になって良品が多くつくられるようになる。これを松下幸之助は「道徳は実利に結びつく」と、言い表わしました。良識ある従業員が誠心誠意仕事をしていれば、結果、ムダが無くなり利益につながるということです。最近は新しい知識・技術が次々と生み出され、世の中にはそれらが満ちあふれています。良識のない従業員がこうした知識・技術だけを優先して仕事をしていると、問題が起こりやすいと言えます。そういったことからも、職場だけでなく学校・家庭でも、良識ある人材を育てることを最重視しなければいけないと思います。

給与リーフレット「従業員のみなさんへ」給与リーフレット「従業員のみなさんへ」綴り
経営図書館にあります

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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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