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経営研究活動

講演会

名 称 「三方よし!」近江商人展
実施日
2010年1月23日~2月27日 講演会2010年2月6日
講演テーマ/
講演者
『近江商人の「AKINDO」精神』
近江商人博物館 学芸員 上平千恵 氏

『今に生きる「近江商人」の経営理念』
ツカキグループ 代表取締役 塚本喜左衛門 氏
講演会概要 松下幸之助の経営道・商人道の原点は、大阪船場の丁稚奉公時代の体験にあり、さらにその源流は、近江商人の商人道にあると言われている。
売り手よし、買い手よし、世間によし、「三方よし!」。近江商人の商売の理念として最も有名な言葉である。
世界的な不況の出口が未だ見えない今こそ、近江商人の商人道を学ぶことによって経済不況を克服するヒントを見出すきっかけとする。
講演要旨

『近江商人の「AKINDO」精神』
近江商人博物館 学芸員 上平千恵 氏

 近江商人は、江戸時代に近江の国(現在の滋賀県)を本拠地として、北海道から九州まで全国津々浦々を歩いて商いをした。各地の市場調査をしながら、諸国の特産物をより効率よく利益のあがる所へ回す、この諸国産物回しという手法は、現在の商社と同じようなものだと言える。

 明治以降、行商スタイルは変化したが、故郷を離れ遠い国で商いをする商人は、格別に正しくあるべきとの真摯な姿勢で、地域の人達に歓迎された。人材こそ宝であると考え、人格も含めて店員を育てたのである。この近江商人をルーツに持つ老舗の企業は数多くある。

 近江商人は、「積善の家に必ず余慶あり」、「先義後利栄」などたくさんの家訓を残している。先人達が自ら得た知恵を共通の理念として後世に伝え続ける家訓の力は大きい。近江商人が生み出した理念の中で最も重要なのは、「売り手よし、買い手よし、世間よし、三方よし」である。この、商いは売り手も買い手も満足すべきものであり、得られた利益は世の中に還元すべし、との商いの極意は決して古いものではなく、グローバル社会を生きる現代の私たちにおいても、経済活動はもとより、人生、物の見方、考え方などにおける判断基準や行動指針にもなりえる大切な知恵ではないかと思う。


『今に生きる「近江商人」の経営理念』
ツカキグループ 代表取締役 塚本喜左衛門 氏

 「三方よし」は、まず自分に厳しく自己責任をしっかり果たせということ。お客様本位に立った経営とはいかにあるべきかということ、そして社会貢献をしっかり果たそうという考え方である。これはどの業種にもあてはまることであり、この理念は、企業の自己責任が厳しく問われる今日、日本的経営のCSRの源流である、ということが言えよう。

 阪神・淡路大震災が起こった時、関東大震災を経験した父親の指示で、茶碗や石鹸、手ぬぐいなどを100軒を超える取引先に送り、大層喜ばれた。父親の、何か自分が支えにならなければとの「三方よし」の精神が活かされたものだと思う。

 近江商人の家では、先祖の成功の秘訣や危機への対処の仕方が代々語り継がれている。わが家には、「三代の図」という絵の家訓がある。初代が身を粉にして働いて土台を築いても、二代目が愉しみごとに傾倒したために、三代目が生活破たんを招くという様子を描いたもので、創業者の精神を忘れてはならないとの教えを伝えている。

 「三方よし」の精神で、お金を倹約し時間を大切にし、精神を仕事に集中させる。そして人生に納得できるよう自分自身に工夫を凝らし、これというものを掴み、次の世代に申し送っていきたいと考えている。

※肩書は当時のものを掲載しています。

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