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経営研究活動

講演会

名 称 「石田梅岩に学ぶ商人道の原点」
実施日
2011年2月5日
講演テーマ/
講演者
「石田梅岩に学ぶCSRの精神」
松下電器産業株式会社 元副社長 平田雅彦 氏

「今に生きる石田梅岩の商人道」
元禄二年創業・株式会社半兵衛麸 代表取締役会長 玉置辰次
講演会概要 江戸時代中期、京都に住む思想家・石田梅岩の教えは、人の心・人間の本質を追究し、庶民に日常生活での道徳の実践を説いて心学として大成した。
商人の営利活動を積極的に認め、商いにおける倫理感の大切さを説いたその教えは、松下幸之助の経営道・商人道に受け継がれている。
日本的経営の源流として、日本の商人道に大きな影響を与えた石田梅岩の「石門心学」の今日的意義とその活かす道を考える。
講演要旨

「石田梅岩に学ぶCSRの精神」
松下電器産業株式会社 元副社長 平田雅彦 氏

 「企業の社会的責任」は、渋沢栄一、松下幸之助などに受け継がれている石田梅岩の思想そのものであり、まさに日本の商人道の教えだと言えるのではないだろうか。

 江戸中期、梅岩は一介の商人の身分で開塾し多くの塾生を集めた。貨幣経済が活性化し商人の存在価値が向上する一方、士農工商の身分制度により商業は賤業であるとされたこの時代に、倫理に基づく商人の営利活動を積極的に認めた梅岩の教えは、人々の心を捉え広く受け入れられたのである。

 アダム・スミスが1776年に著した『国富論』より37年も前に生まれた梅岩の著書『都(と)鄙(ひ)問答(もんどう)』には、商人道とは何かが明確に示されている。それは、企業は社会の公器であるとし、顧客満足と企業の社会貢献の必要性を訴え、利益は社会貢献の結果であると考えていた幸之助哲学そのものである。この梅岩思想を受け継いで「お客様大事」の考え方で商売をしてきたのは日本人が一番進んでいたのではないだろうか。

 2008年のリーマンショックによる世界金融危機を契機に、資本主義が大きな反省期を迎えている今こそ、梅岩の言う「実の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」という共生の思想が求められている。そして梅岩を中心とする日本の商人道の精神を世界に発信する時だと私は確信している。


「今に生きる石田梅岩の商人道」
株式会社半兵衛麸 代表取締役会長 玉置辰次 氏

 3代目が麩屋を営みながら、石田梅岩の弟子杉浦子斎に石門心学を学び、「先義後利」を家訓とした。損得ではなく正義に基づいた商いを行うべし、利益は人様のお役に立った代償であるとの教えを忠実に実践し、代々守り続けてきた。

 私は幼少から、父に実生活の中で人間としての生き方や正しい商いについて教わった。父は「老舗」(しにせ)という言葉を嫌い、店は老いてはいけない、気持ちは「新舗」(しんみせ)との思いで家訓を守り、本質は変えずに常に新しい商いをせよと戒めてくれた。店は新幹線の車両が一両ずつ繋がるが如く、代々初代の気持ちで商売をしなければいけない。「先義後利」は車両の連結部だと考えている。

 商売というものは世間の為、社会に尽くす為にある。人様のお役に立った代償としてお金を頂くのだということをしっかり心に刻み、信用を重んじ、ここの商品でないとだめだと言われるほどの、信者さんができるような店になるべく努力をし続けてきた。この精神は創業以来320年受け継がれてきたのである。

 不況の時こそチャンスになる。新製品を作る。信用を築く。人を育てる。今こそ準備万端整えておくことが大事なのではないだろうか。

※肩書は当時のものを掲載しています。

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