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館長からのメッセージ

地名について
2021年9月

 新幹線に「新」とつく駅名があります。
新横浜・新富士・新大阪・新神戸・新倉敷・新尾道・新岩国・新山口・新下関・新鳥栖・新大牟田・新八代・新水俣・新白河・新花巻・新青森・新函館北斗・新高岡

 けっこうな数です。在来線や私鉄にも、「新」とついた駅名がたくさんあります。おそらく複雑ないきさつがあって、駅名に「新」をつけたのではないかと推察します。しかし、「新」とついたこれらの駅名は、何十年、何百年経っても「新~」という駅名なのでしょうか。どうも近視眼的にあるいは妥協して「新」をつけているように思えてなりません。もし、「横浜」という名称にこだわるのであれば、駅がある地名を加えて「横浜篠原町」としてはいかがでしょうか。グッと地元感が感じられていいと思いませんか。

 また、最近の地名変更には、西新宿・北新宿といったように「東西南北」をつける傾向がありますが、方向を示しただけの無味乾燥な地名に思えます。本来、地名には長い歴史を通して、人間の営みや地形等の自然が幾層にも重なって、「鍛冶屋町」「衣笠馬場町」「嵐山上河原町」といったように、その土地ならではの名称がつけられてきました。

 さらには「1丁目2番地」というように数字で表すと、郵便配達の人やタクシー運転手には大変便利だと思います。しかし、代々受け継がれてきたその土地ならではの地名には、歴史が語る深い意味がこめられているのです。その土地で育まれ親しまれてきた地名をもっと大切にしてもいいのではないかと思います。世の中はAI等の技術が進化してきたのですから、「新」「東西南北」「1丁目2番地」にこだわらなくても、昔からの地名で合理的・効率的な対応ができるようになるのではないでしょうか。

 松下資料館の近くにあるホテルも、以前は「新・都ホテル」という名称でしたが、近年、「都ホテル京都八条」になりました。京都駅前で便利なホテルということもあり元々利用客は多かったようですが、ホテル名から「新」を外して「京都八条」とホテル前の通りの名称を入れたことによって、一層京都らしさを感じられてさらに人気が出てきたそうです。

 『味わいのある地名が元々あったのに、なぜ昔の人は無味乾燥な地名に変えてしまったんだろう』と、後世の人たちに言われないようにしたいものです。

都ホテル京都八条都ホテル京都八条
松下資料館と同じ通りにあります

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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