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館長からのメッセージ

「従業員は幸せに働いているか」
2022年5月

 松下資料館の映像ブースに、松下電器(現・パナソニック)経理担当副社長だった平田雅彦氏が語っている映像があります。『創業者の遺言』というテーマで、松下幸之助が亡くなる一か月ほど前に、病床にあった松下に決算報告をした時の話です。

 平田氏は普段通り決算報告をしていました。
 いつもでしたら「ここはどうなってるんだ」「あそこの会社はどうか」と訊いていた松下幸之助でしたが、病状が思わしくないこともあり何も言わずにじっと聴いていたそうです。報告を終えると、秘書が通訳してくれないとわからないほどの弱々しい声で、平田氏の顔をじっと見て、「平田君、松下電器の従業員は幸せに働いているか?」と問われました。平田氏はその問いに思わず涙が出るほどの感動をおぼえられたそうです。「100%とは申しませんが、谷井社長(当時の社長)が一生懸命されてますから、大半の人は幸せに働いてくれていると思います」と応えるのが精いっぱいでした。

 帰ってから平田氏は、「従業員が幸せに働く」とは、
① 「売上・利益が上がっていなくてはならない」
② 「会社と従業員が一体化してなくてはならない」
つまり経営の究極を問うておられたのだ、と思ったそうです。
 この一言が、創業者松下幸之助からの平田氏への遺言となったのです。

 解説は不要かとは思いますが、①と②について、私なりの補足をさせていただきます。
 松下幸之助は、会社が黒字になるということは、「社会に役立った結果」「お客様に喜ばれた結果」であり、従業員はそのことに誇りを持ってほしいと考えていました。ですから、①の「売上・利益が上がっていなくてはならない」は従業員が幸せに働ける大事なことだと言えます。
 松下電器(現・パナソニック)の経営基本方針(経営理念)には、「なぜ我社は存在しているのか。なぜ私たちはこの仕事をしているのか。なぜ自らを成長させなければならないのか」といった従業員としての大事な物の見方・考え方が明確に記されています。我社には「社会に役立つ、お客様に喜ばれる」といった明確な方針があり、その方針に従って従業員一人ひとりが自らの能力を思う存分に発揮してほしいと考えたのが松下幸之助でした。②の「会社と従業員が一体化してなくてはならない」ということは、会社の方針を自らの仕事のものさし・使命にしていれば働きがいが生まれるということなのです。

 この遺言には、松下幸之助の「事業は人なり」と考えて経営してきた象徴的な哲学が、ひと言で言いあらわされているのではないでしょうか。

映像「創業者の遺言」映像「創業者の遺言」
映像ブースで視聴することができます

みなさまのご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫

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