松下資料館とは

館長からの
メッセージ

コンプライアンスと経営理念

最近、コンプライアンスに違反して役員が逮捕されたとか、企業が賠償金を課せられたというニュースをよく見かけます。コンプライアンスは法令違反にとどまらず、不正経理、情報漏洩、ハラスメント等の倫理・公序良俗といった広い範囲におよんでいます。もしこれに違反すると、企業は様々な損失を被るだけでなく、社会的な制裁を受けて信用失墜することにもなります。どの企業も、コンプライアンスに対する管理体制(ガバナンス)の強化が強く求められています。そうしたことから、従業員の正しい知識修得や意識向上を図るために、規則やマニュアルを作成して研修を実施したりする企業が少なからずあります。

今日のようにコンプライアンスという言葉がなかった時代に、パナソニックグループ(当時の松下電器グループ)の創業者である松下幸之助は、「企業は公器」といった考えの下に経営理念を構築しました。「より豊かなくらしをおくりたい」という人々の願いを満たしていくところに我社の役割・使命がある、という考えにより、「綱領・信条・七精神」を表したのです。パナソニックでは、こうした経営理念を総合して「経営基本方針」と呼んでいます。

  • 綱領:産業人たるの本分に徹し社会生活の改善と向上を図り世界文化の進展に寄与せんことを期す
  • 信条:向上発展は各員の和親協力を得るに非ざれば得難し 各員至誠を旨とし一致団結社務に服すること
  • 七精神:「産業報国の精神」「公明正大の精神」「和親一致の精神」「力闘向上の精神」「礼節謙譲の精神」「順応同化の精神」「感謝報恩の精神」

この経営基本方針に基づいて従業員は仕事をしてください、と松下幸之助は根気よく言い続けました。困った時、チャレンジしなければならない時、この経営基本方針に自ら戻れば仕事の意義や使命を確認でき、自分を励ますこともできるわけです。つまり、法律には何も書かれてないグレーゾーンで判断しなければならない時でも、経営基本方針に基づいて仕事をすれば、社会の期待に応えた正しい仕事ができることを、従業員に理解させていったのです。この経営基本方針の従業員への浸透化が、良識ある判断ができる人材、社会に貢献できる人材を育成することにつながったのだと私は思っています

正しい経営理念に基づいた経営は、コンプライアンスが求められる時代に大変重要なものと言えるのではないでしょうか。今一度、経営理念のあり方について考えてみたいものです。

※参考:「パナソニックグループの経営基本方針」

展示室「経営道・商人道」コーナー
松下幸之助が確立した経営理念や、経営、商売の基本のあり方を紹介しています

みなさまのご来館をお待ちしております。

公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫