館長からの
メッセージ
部下に考えさせて責任感を持たせる
私は"早く物事を処理したい"というせっかちな性格なものですから、部下から報連相があると、「こうしよう、このようにやってほしい」と、すぐに指示や決断をしがちです。場合によっては、部下の意向を聞かずに指示や決断をするものですから、違った考えをもっていた部下が気分を害していたのかもしれません。
人づくりの名人であった松下幸之助は、幹部から報連相があったら、頭ごなしに指示・命令をするのではなく、「あんたの意見はどうや」「僕はこう思うんやが君はどう思う」といったように相談調で質問をしていたようです。このように聞かれると、幹部は答えざるを得ません。その答えが、"(会社の経営理念に基づいた)仕事の意義・使命"に合うまで、松下幸之助は質問をしていったそうです。この相談調で質問をすることの効果は、次の3点があげられると思います。
- "仕事の意義・使命"に沿って「考える部下」に育つ
- 部下が得心したかどうかがわかる
- 自分で答えたことなので「責任感をもって仕事にあたる部下」に育つ
松下幸之助は、このように相談調で質問することによって、幹部に考えさせて責任感を持たせるようにしていました。まさに"自主責任経営"ができる幹部を育てていったわけです。
私のように、すぐに指示や決断をしていると、「考えない」「受け身になる」「責任感のない」部下ばかりになり、創造性のない沈滞化した職場になってしまう可能性があります(運よく、私の職場は部下に恵まれていて活性化しております)。
一般に、指示・決断を早く行わなければならないと思っている責任者は多いと思います。時と場合によりますが、部下を育成するといった考えに立てば、松下幸之助のように相談調で質問することを心がけるのも一つのやり方ではないでしょうか。手間をかける人材育成かもしれませんが、創造性の高い活性化した職場づくりができると思います。
みなさまのご来館をお待ちしております。
公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫