館長からの
メッセージ
自分の持ち味を生かす
私は野球が好きで、プロ野球の試合をテレビや球場でよく観戦しています。関西在住ということもあり、多くの人がそうであるように「阪神タイガース」の大ファンなのですが、最近は他チームも含めて選手一人ひとりの個性に興味を持つようになりました。最も関心がある選手の一人に、DeNAの宮﨑敏郎内野手がいます。バッターボックスでの構えが独特で、他の選手が真似をしたら全く打てないのではないかといったユニークな構えなのですが、今年も打率・本塁打・打点で上位にランクされています。打撃フォームの改善に試行錯誤をしてきた末の結果が、現在の宮﨑選手の持ち味になり、毎年の好成績につながっていると考えられます。当然のことながら、打撃フォームの基本の型はあると思います。宮﨑選手もその型を身につけた上で、自分の持ち味を加えていったのではないでしょうか。
この持ち味について、松下幸之助は自らの著書「指導者の条件」(PHP研究所刊)の中で、徳川家康を例に出して次のような考えを述べています。
「家康のやり方は家康という人にしてはじめて成功するのであって、家康とはいろいろな意味で持ち味のちがう別の人がやってもそれはうまくいかないものである。だから、家康のやり方をそのまま真似るというのでなく、それにヒントを得て自分の持ち味に合わせて生かすことが大事なのである。」
私たちはある分野で秀でた人を見て、真似てみたいと思うことがよくあります。真似ることは悪くはないのですが、同じようにできるかというと案外難しかったりするものです。もしうまく真似ることができたとしても、本家本元を超えることには限界があるのではないでしょうか。
物まねタレントの大御所とも言えるコロッケさんは、物まねの対象を自分の持ち味を生かしながらデフォルメして独特のお笑いの世界を創り上げられました。これはコロッケさんだからできることです。誰かが真似をしても、コロッケさんを超えることは相当難しいのではないでしょうか。
人生は一度きり。自分の道は自分で切り拓いていきたいものです。ヒントを得ることができても、他の人のやり方に惑わされるのではなく、自分の持ち味を生かした生き方をしてみたいものですね。
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公益財団法人 松下社会科学振興財団
松下資料館 館長 遠藤紀夫