館長からの
メッセージ
生成発展という考え方
私たちの生活に必要不可欠な石油がいずれ枯渇すると言われています。石油はエネルギー資源としてだけではなく、さまざまな化学製品等にも使われています。このようにいろんな分野で役立っている石油が枯渇すると、社会は大混乱に陥るのではないかと心配になります。もし石油に代わる資源が開発されないと、石油の取り合いとなり、誰かが利益を得ると、その分だけ他の人が不利益をこうむるといった「ゼロサム社会」になってしまいます。つまり一定の(あるいは減少する)パイの中で奪い合いになってしまうのです。それが原因で、紛争や戦争につながることもあると思うのです。
こうした石油だけでなく資源全般の有限性について、松下幸之助は次のように述べています。
「個々の資源というものをとってみれば、有限であり、使っていくうちになくなるものもでてくるだろう。けれども、それにかわるものは人知によって必ず生み出し、あるいは見出すことができると考えるのである。現に人間は過去の歴史において、そういうことをしてきている。」(松下幸之助著『実践経営哲学』PHP研究所刊)
確かにエネルギー資源だけをとってみても、木炭、石炭、石油、原子力、太陽光等、次々と人間は開発してきました。今後、研究が進んで、もっといいエネルギー資源が開発されていく可能性があります。
こうした資源が枯渇するといった有限性について、直近では重要な問題ではありますが、長期的にかつ大きく考えれば、人間の叡知によって代替物が開発されるのであって、資源は無尽蔵にあると考えられます。
また、松下幸之助は生成発展について次のような考えを述べています。
「この大自然、大宇宙は無限の未来にわたって絶えざる生成発展を続けているのであり、その中にあって、人間社会、人間の共同生活も物心両面にわたって限りなく発展していくものだと思うのである。」(松下幸之助著『実践経営哲学』PHP研究所刊)
このように物事がことごとく生成発展しているという考え方に立てば、国も企業も進化し続ける社会に応えた活動を常にしていかなければなりません。有限である資源に対処しつつも、新しい資源の開発に国も企業も協力し合えば、進化する社会に応えることができます。生成発展という考え方に立って活動することによって、一定のパイを取り合うような悲しい争いを防ぐことができるのではないかと思います。
生成発展という考え方は資本主義の基本であり、社会をより一層豊かにする道であることを私たちは知っておかなければならないのではないでしょうか。
『実践経営哲学』(PHP研究所刊)
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松下資料館 館長 遠藤紀夫